飲食業・小売業の残業時間削減に効果!?【1週間単位の変形労働時間制】

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1週間単位の非定型的労働時間制 労働法

「直前になるまでお客さんの予約状況がわからないので、1日8時間・週40時間と言われても、なかなかそのとおりにするのは難しくて、残業時間が増えてしまいます。
予約の状況を把握したうえでシフトを組みたいのですが、そんなやり方って法律上できますか?」

というご質問をいただきました。

そこで、ご紹介させていただいたのが、この記事でご説明する「1週間単位の非定型的変形労働時間制」です。

この変形労働時間制度は、1週の所定労働時間が40時間以内であれば、1日の所定労働時間を最長10時間までで設定できるというものです。

飲食店などで、直前になるまで予約状況が確定しないというお店などに向いています。

1週間単位の非定型的変形労働時間制とは?

1週間単位の非定型的は、常時使用する従業員数が30人未満で、小売業、旅館、料理・飲食店の事業を営んでいる場合のみ、活用できる変形労働時間制です。

常時使用する従業員とは?
ここでの常時使用する従業員は、アルバイトやパートタイマー等の正社員以外の従業員も含めて、常態として雇用している従業員のことを指します。
複数の店舗を経営している場合は、店舗ごとに人数をカウントします。

対象の事業所で、1週間の所定労働時間を40時間以内に設定すれば、1日の所定労働時間が8時間を超えてもかまいません。ただし、上限10時間

予約の状況などにより、忙しい日は労働時間を長くしき、比較的忙しくない日は、労働時間を短くすることにより、1週間単位で毎日の労働時間を弾力的に定めることで、全体としては労働時間の短縮が図れます。

1週間単位の非定型的変形労働時間制の概要

1週間単位の非定型的変形労働時間制の設定例

いま、ご説明したように、1週間単位の非定型的変形労働時間制は、1週間の所定労働時間が40時間以内になるように設定することで、特定された日において1日8時間を超えて労働させても残業代は発生しません

1週間の労働時間の設定例
1週間単位の変形労働時間例
このように1週間の各日の所定労働時間を設定することで、月・水曜日は、1日10時間働いても、残業代は発生しません。

1週間単位の非定型的変形労働時間制の導入

1週間単位の非定型的変形労働時間制を導入するためには、必ず従業員の過半数を代表する者との労使協定が必要になります。

就業規則にも規定が必要です。

また、労使協定を締結したあと、「1週間単位の非定型的変形労働時間制に関する協定届」労働基準監督署に届け出なければなりません。

労使協定に定める事項
1.対象となる労働者の範囲
2.労働時間
3.有効期間

1.対象となる労働者の範囲
1週間単位の非定型的変形労働時間制の適用を受ける労働者を定めます。

例:正社員全員、販売スタッフなど

2.労働時間
1週間の所定労働時間は40時間以内、1日の所定労働時間は10時間以内とする定め

3.有効期間
1週間単位の非定型的変形労働時間制の労使協定には、有効期間の定めは必要ないとされています。

ただ、この変形労働時間制が本当に必要かどうか、効果があるのかどうかを検証し、今後も継続していくか否かの判断をするためにも、有効期間を設定しておくほうが良いのではないかと、私は考えています。

(1週間単位の非定型的変形労働時間制に関する協定届の例)
(厚生労働省愛知労働局HPより)

では、次に1週間単位の非定型的変形労働時間制の就業規則への規定の仕方を、ご説明していきます。

1週間単位の非定型的変形労働時間制の就業規則規定例

1.会社は従業員の過半数を代表する者と、労使協定を締結して1週間単位の非定型的変形労働時間制により労働させることがある。

2.1週間とは、毎週日曜日から土曜日とする。

1週間の起算日は、会社が任意で決定することができます。1週間の各日の労働時間をその週がはじまる前までに、書面で通知しないといけないことになっているため、週の起算日を定めておく必要があります。
※書面はシフト表で差し支えありません

3.各従業員の1週間の所定労働時間、始業・終業時刻、休憩時間は、毎週土曜日までに、書面で特定して、通知するものとする。

いつまでに通知するかは、週の起算日によって決めてください。

4.会社は緊急でやむを得ない事由がある場合には、前項で定めた所定労働時間を変更することがある。この場合には、所定労働時間を変更しようとする日の前日までに、書面により従業員に通知するものとする。

所定労働時間を変更する場合も、書面による通知が義務づけられています。
※緊急でやむを得ない事由とは、天災事変など客観的な事実により、当初予定していた業務の繁閑に大幅な変更が生じた場合が該当するとされています。
会社の主観的な理由での変更は、やむを得ない事由とは認められない可能性が高いです。

1週間単位の非定型的変形労働時間制の注意点

残業代の計算について

つぎの順序で残業時間を算定し、残業代を計算します。

1.1日の残業時間
1日8時間を超える時間を定めた日はその時間を超えて、それ以外の日は8時間を超えて労働した時間が残業時間となります。

2.1週の残業時間
1週間で40時間を超えて労働した場合は、超えた時間が残業時間となります。

1.で残業時間としてカウントされている時間は除きます。

書面での通知が必要

就業規則の規定例でもお伝えしましたが、1週間がはじまる前には、書面で各日の労働時間、始業・終業時刻、休憩時間を従業員に通知しなければなりません。

また、所定労働時間を変更する場合にも書面での通知が必要なことから、事務手続き上の手間がかかることは認識しておいてください。

小売、旅館、飲食業で10人未満の事業所は注意

小売、旅館、飲食業で従業員数が10人未満の事業所の場合、特例事業措置事業場に該当し、週の所定労働時間の上限が44時間となっています。

しかし、1週間単位の非定型的変形労働時間制を使ってしまうと、特例扱いはなくなり、40時間が上限となってしまいます。

ちなみに、1ヶ月単位の変形労働時間制の場合は、変形労働時間制を使っても、特例の44時間上限は残りますので、変形労働時間制の導入を検討される場合は、このことも頭に入れておいてください。
1ヶ月単位の変形労働時間制については、こちらの記事を参考にしてください。
「変形労働時間制(1ヶ月単位)の残業、届け出など規定例をまじえわかりやすく解説」

まとめ

1週間単位の非定型的変形労働時間制を導入できるのは、小売、旅館、飲食業で30人未満の事業所を営む場合に限られています。

対象となる事業所を運営されていて、週ごとに柔軟なシフトを組みたいとお考えの場合は、導入を検討されると良いのではないでしょうか。

ただし、従業員数が10人未満の事業所の場合は、週44時間の特例がなくなりますので、注意してください。

1週間単位の非定型的変形労働時間以外の労働時間制の概要は、こちらの記事を参考にしてください。
「変形労働時間制とはどのようなものか?種類と特徴をわかりやすく解説」