標準報酬月額の変更(月額変更届)の仕組みや書き方を簡単に解説

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社会保険

従業員の給与や役員報酬が大幅に変更になった場合に、社会保険料を変更する手続きが月額変更(随時改定)です。

役員報酬を変更する場合は、よく経営者や税理士さんからご相談を受けますが、従業員の月額変更届については、見落とされていることがよくあります。

そこで、この記事では、月額変更届の仕組みを簡単に説明し、月額変更届を届け出るときに必要な添付書類についてもご紹介していきます。

標準報酬月額の変更(月額変更)とは?

社会保険に加入している人は、会社から支給されている給与額に応じて、下図のように「標準報酬月額」が設定されています。


(令和2年9月 兵庫県の標準報酬月額表から一部抜粋)

設定されている標準報酬月額によって、毎月給与から天引きされる社会保険料の金額がきまっています

例えば、毎月の給与額が、305,000円の人は、標準報酬月額が300,000円となりますので、健康保険料が15,210円、厚生年金保険料が27,450円です。(介護保険は40歳以上65歳未満のみ対象)

なお、標準報酬月額の区分のことを「等級」といいます。
図でいうと、一番左が健康保険の等級、左から2番目が厚生年金保険の等級を表しています。

毎月支給される給与が増減したことによって、標準報酬月額の等級に2つ以上の差が生まれた場合を月額変更といいます。

例えば、305,000円の人が335,000円に昇給した場合、標準報酬月額が300,000円から、400,000円に2つアップしますので、月額変更に該当します。

ただし、単に給与変動があって標準報酬月額に2つ以上の差が生まれただけでは、月額変更に該当しませんので、今から月額変更に該当するための条件をお伝えしていきます。

標準報酬月額の変更(月額変更)の条件

1.昇給や降給、あるいは新たな手当の支給や手当の減額など、毎月固定的に支給される給与に変動があったこと

固定的な給与の変更例
・基本給が昇給または降給した
・役職者となり役職手当が支給されるようになった
・従事する業務が変更になり、業務手当が減額になった
・パートから正社員登用され、時給から月給になった
・時給がアップした

2.変動月からの3ヶ月間に支給された給与(※)を平均して算定した標準報酬月額と、現在の標準報酬月額との間に、2等級以上の差があること(年間平均の場合は1等級の差←これについては別に説明します)

※変動があった給与や固定的な給与だけでなく、残業代や出来高に応じた手当など、月によって変動する給与を含めた総額

3.変動月からの3ヶ月間の各月の支払基礎日数(出勤日数)が17日以上あること

支払基礎日数とは、給与を計算する際の基礎となる日数のことです。

具体的には給与形態によって次のような取り扱いになります。
・月給制 給与計算期間中の暦日数=支払基礎日数
・日給月給制 給与計算期間中の所定労働日数から、欠勤日数を引いた日数
・日給・時給制 給与計算期間中の出勤日数
※有給休暇を取得した日も支払基礎日数になります。
一般的に「月給制」と言われているのは、本当は「日給月給制」のことを指している場合が多いです。
月給制は遅刻や欠勤があっても給与控除をされません。一方で、日給月給制は遅刻控除や欠勤控除があります。小さな会社で、本当の意味での月給制を採用されているケースは、ほとんどないのではないでしょうか。

この3つの条件を満たした場合のみ、月額変更に該当し、月額変更届を日本年金機構に届け出ることで、標準報酬月額の改定が行われます。

標準報酬月額の変更に該当しないケース

つぎのような場合は、2等級変動が生じても月額変更には該当しません

・残業代や出来高に応じた手当が増加(減少)したことによる変動
※ただし、出来高の計算単価がアップ(ダウン)した場合は、月額変更に該当します。

固定的な給与は上がったが、3ヶ月平均した際の標準報酬月額が、現在の標準報酬月額よりも下がった場合

固定的な給与は下がったが、3ヶ月平均した際の標準報酬月額が、現在の標準報酬月額よりも上がった場合

標準報酬月額の変更の特例

今、ご説明したように、月額変更に該当するか否かは、3ヶ月間の給与の平均で判断するとお伝えしましたが、年間で判断するという例外的な措置「年間平均の保険者算定」があります

これは、毎年繁忙期が決まっている会社で繁忙期に昇給した場合、標準報酬月額がグッと高くなり、社会保険料負担が増大してしまうことを軽減するための措置です。

例えば毎年1~3月が繁忙期の会社の場合

現在の標準報酬月額:24万円

4月~12月 基本給23万円 残業代1万円
1月に基本給が1万アップ
1月~3月 基本給24万円 残業代5万円

1月~3月の平均給与が29万円となり、月額変更に該当するため、標準報酬月額が30万円となります。これにより標準報酬月額が、3等級アップ!
社会保険料にすると毎月約8,500円のアップとなります。
(兵庫県:40歳未満 令和2年10月現在)

これはあまりにも不憫ですよね~汗
そこで、年間平均で算定してみると次のようになります。

(1)基本給の変動月以降の3ヶ月間の金額を求める
(24万円+24万円+24万円)÷3=24万円
(2)残業代の1年間の平均額を求める
(1万円×9ヶ月+5万円×3ヶ月)÷12ヶ月=2万円
(3)上記2つの計算結果を合計する
24万円+2万円=26万円

標準報酬月額が26万円となり、1等級のアップとなります。
この年間平均を使う場合は、1等級のアップでも月額変更に該当します。
社会保険料は、先ほどと同じ条件の場合、毎月約2,800円のアップになります。

原則で計算した場合との差額が、5,700円。これが1年間続くとすると、年間68,400円も社会保険料の負担額が変わってきます。

できるのなら、年間平均を活用したいと思いますよね。
しかし、年間平均を活用するためには一定の条件を満たす必要があります。

標準報酬月額変更の特例の条件

前提として、毎年繁忙期が同じ時期にあることと、昇給など固定的な給与の変動も毎年同時期に行われている場合のみ対象となります。

そのうえで、つぎの3つのステップで年間平均の月額変更に該当するかを判断します。

1.現在の標準報酬月額と、原則どおりの月額変更によって算定した、標準報酬月額に2等級以上の差があること

今の例でいくと、現在:24万円<通常の算定:30万円(3等級の差)

2.原則どおりの月額変更による標準報酬月額と、変動月後の固定給与の3ヶ月平均額+変動月前9ヶ月と変動後3ヶ月の残業代など非固定的な給与の平均額によって算定した、標準報酬月額に2等級以上の差があること

通常の算定:30万円>年間平均の算定:26万円(2等級の差)

3.現在の標準報酬月額と、年間平均で算定した標準報酬月額に1等級以上の差があること

現在:24万円<年間平均の算定:26万円(1等級の差)

→年間平均の月額変更に該当!

このようにややこしい計算が必要になってきますが、給与計算ソフトや給与計算のクラウドサービスを使っていれば、自動的にチェックをしてくれるので楽ですし、安心です。

月額変更届の書き方

書き方については、年金機構の記載例がありますので、こちらを見ていただければ、どなたでも簡単に作成できます。
日本年金機構 標準報酬月額変更届の様式・記入例
基本的には、3ヶ月間の各月の給与額と平均額を記載するだけです。

月額変更届に添付する書類

つぎの1.~3.に該当する場合は、添付書類が必要です。

1.標準報酬月額が、5等級以上下がる場合

一般の従業員の場合
・賃金台帳
・出勤簿(タイムカード)
※少なくとも変動月前1月分と変動月以降3ヶ月分が必要

役員の場合
・賃金台帳
・役員報酬決定の決議がされた取締役会議事録や株主総会議事録の写し
(役員報酬決定通知でも可)
役員報酬決定通知はこちらの記事に様式例と記載例があります。
「社会保険の加入手続きが遅れたときはどうする?」

2.手続きを60日以上さかのぼって行う場合
月額変更届に該当した日から、60日以上経過して手続きをする場合は、1.の場合と同様の添付書類が必要となります。

3.年間平均の月額変更をする場合
・年間報酬の平均で算定することの申立書(随時改定用)
・健康保険厚生年金保険被保険者報酬月額変更届・保険者算定申立に係る例年の状況、標準報酬月額の比較及び被保険者の同意等(随時改定用)

様式および記載例が、日本年金機構のホームページに掲載されています。
日本年金機構 標準報酬月額変更を年間平均で算定する場合 様式・記入例

標準報酬月額変更の届け出は義務

月額変更に該当した場合に、月額変更届を出すことは義務です。決して任意ではありません。

特に等級が上がる場合は、従業員も会社も社会保険料の負担が増えますが、適切な手続きをするようにしましょう。

月額変更届の提出に漏れがあったことが調査で判明した場合は、さかのぼって社会保険料の差額支払いが必要となります。

まとめ

標準報酬月額変更の要件

1.昇給や降給、あるいは新たな手当の支給や手当の減額など、毎月固定的に支給される給与に変動があったこと

2.変動月からの3ヶ月間に支給された給与(※)を平均して算定した標準報酬月額と、現在の標準報酬月額との間に、2等級以上の差があること(年間平均の場合は1等級の差)

3.変動月からの3ヶ月間の各月の支払基礎日数(出勤日数)が17日以上あること

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