平均賃金の計算方法、休業手当で使う平均賃金とは?【計算シート紹介】

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労働法

コロナ禍の影響で、雇用調整助成金と助成金を受給するための必須条件の一つである、休業手当の支払いが、一気に世の中に知られることになりました。

そして、その休業手当の計算のもととなる、平均賃金の計算がややこしい、わかりにくいというご相談を多く受けました。

そこでこの記事では、平均賃金の計算方法はもちろんのこと、そもそも平均賃金とはなんなのか、どういうときに平均賃金を計算する必要があるのかをお伝えしていきます。

平均賃金とは?

平均賃金は、法律(労働基準法)で定められているもので、「休業手当などの計算する際の基準に使いさないよ。」と、使う場面も法律で決められています。

平均というのは、世間の給与相場などではなく、従業員それぞれの平均という意味です。ですので、平均賃金の計算は、従業員ごとに行わなければなりません。

平均賃金を利用する場面

・解雇予告手当の計算をするとき
・休業手当の計算をするとき
・有給休暇取得時に支払う給与を計算するとき
・業務災害による傷病・死亡の場合の補償額の計算をするとき
・減給制裁の制限額の計算をするとき

解雇予告手当の計算をするとき

通常、解雇をするときは30日以上前の予告が必要ですが、平均賃金の30日分の解雇予告手当を支払うことで、即日解雇できます

解雇に関する記事の詳細はこちら→
正社員を解雇するには?解雇予告、給料の保障など気をつけることは?

休業手当の計算をするとき

会社都合で休業する場合は、平均賃金の6割以上を支給することになっており、これは、雇用調整助成金の支給要件の一つにもなっています。

有給休暇取得時に支払う給与を計算するとき

有給休暇を取得した日に支払う給与は、
(1)通常の賃金
(2)平均賃金
(3)健康保険の標準報酬月額(日額相当)
のいずれかとなっています。

実務的には(1)通常の賃金を支払うことがほとんどですので、平均賃金を使うことはないと言っても良いかもしれません。

有給休暇についての詳細はこちらの記事を参考にしてください。

業務災害による傷病・死亡の場合の補償額の計算をするとき

法律(労働基準法)では、業務災害によって従業員がケガや病気になったときや、死亡したときは、会社がその補償を行なうことになっており、その補償額の計算に平均賃金が使われます。

ただし、現実的には、労災保険からの給付が業務災害への補償となるため、会社が従業員に直接補償をすることはありません。
その労災保険給付を受ける際の、給付基礎日額を算定するために平均賃金が使われます。

減給制裁の制限額の計算をするとき

懲戒処分として、減給をおこなう場合、1回の額は平均賃金の半額まで、複数回おこなう場合は支払い賃金総額の1割までとされています。

このように、平均賃金は、休業手当の計算だけなく、解雇予告手当や労災保険の給付の計算などにも使われる重要なものなんです。

では、その平均賃金はどのように計算すればよいのかをお伝えしていきます。

平均賃金の計算方法は?

原則
直近3ヵ月間に支払われた賃金の総額 ÷ その期間の総日数(暦日数)

直近3ヶ月の考え方
算定事由発生日の前日以前の直近の給与締日からさかのぼった3ヶ月です。
算定事由とは、先ほどの(1)解雇予告手当~(5)減給制裁の制限額の計算のことです。
算定事由 算定事由発生日
休業手当 休業日(2日以上のときは初日)
年次有給休暇 休暇日(2日以上のときは初日)
災害補償 災害の起きた日または診断で疾病が確定した日
減給の制裁 制裁の意思表示が相手に到達した日

具体例:給与締日15日 会社都合による休業開始日9月20日
この場合の直近3ヶ月とは、
8月16日~9月15日
7月16日~8月15日
6月16日~7月15日
となります。

賃金の総額とは?残業代や賞与の取り扱いは?

賃金総額に含まれるもの

基本給や役職手当、職務手当、家族手当、住宅手当、通勤手当、精皆勤手当などの諸手当はもちろんのこと、残業代や出来高制の手当(インセンティブ手当)、通勤定期券代及び昼食料補助等も含まれます。

6ヶ月分の通勤定期代などを支給している場合は、1ヶ月ごとに支払われているものとして計算します。

賃金総額に含まれないもの

1.臨時に支払われた手当など
・結婚手当
・私傷病手当
・加療見舞金
・退職金
など
※支給される事由が発生することが確定しておらず、非常にまれに発生する手当です。

2.3か月を超える期間ごとに支払われるもの
・1年に2回支給される賞与
※賞与でも、3か月ごとに支払われる場合は賃金総額に含めます。

平均賃金の計算例

計算例1

9月20日から会社都合の休業を開始した
・給与締切日は毎月15日
・月給制
基本給20万 職務手当2万円 通勤手当1.2万円
計算期間 総日数 給与額
8月16日~9月15日 31日 232,000円
7月16日~8月15日 31日 232,000円
6月16日~7月15日 30日 232,000円
合計 92日 696,000円

平均賃金:
690,000円÷92日=7,565円21銭(銭未満切り捨て)

休業手当:
7,565円21銭×60%=4,539円(円未満四捨五入)
休業1日につき、4,539円以上の休業手当の支払いが必要

計算例2

9月20日から会社都合の休業を開始した
・給与締切日は毎月15日
・月給制
基本給20万 職務手当2万円 通勤手当1.2万円
残業手当1万円(各月)
計算期間 総日数 給与額
8月16日~9月15日 31日 242,000円
7月16日~8月15日 31日 242,000円
6月16日~7月15日 30日 242,000円
合計 92日 726,000円

平均賃金:
690,000円÷92日=7,891円30銭(銭未満切り捨て)

ここまでは事例1と同じなのですが、残業代や出来高制の手当が支給されている場合や、時給制や日給制の場合は、その総額を出勤日数(労働日数)で割った6割に当たる額の方が高い場合は、その額を平均賃金とします

A.原則の計算(残業手当を除く)

計算期間 総日数 給与額
8月16日~9月15日 31日 232,000円
7月16日~8月15日 31日 232,000円
6月16日~7月15日 30日 232,000円
合計 92日 696,000円

690,000円÷92日=7,565円21銭(銭未満切り捨て)

B.残業手当

各月の勤務日数は下図のとおりとします。

計算期間 総日数 給与額
8月16日~9月15日 21日 10,000円
7月16日~8月15日 20日 10,000円
6月16日~7月15日 22日 10,000円
合計 63日 30,000円

30,000円÷63日×0.6=285円71銭(円未満四捨五入)

A+B
7,561円21銭+285円71銭=7,850円92銭

7,891円30銭>7,850円92銭ですので、この事例の場合は、原則どおり7,891円30銭を平均賃金とします。

平均賃金の計算シート

このような平均賃金の計算を電卓をたたいておこなうのは、手間がかかりますし、計算ミスが起こる可能性もあります。
そこで、平均賃金計算用の専用シート(EXCEL)がありますので、そのシートを使うことで、手間を省き、ミスを少なくすることができます。

計算シートのダウンロード(提供元:厚生労働省 滋賀労働局)
https://jsite.mhlw.go.jp/shiga-roudoukyoku/content/contents/000271177.xlsx