変形労働時間制(1ヶ月単位)の残業、届け出など規定例をまじえわかりやすく解説

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変形労働時間(1ヶ月単位) 労働法

この記事は、

1ヶ月単位の変形労働時間制とは
「どのようなものなのか?」
「導入するのにはどうすればよいのか?」
「具体的な規定例を知りたい。」

といったお悩みをお持ちの方のための記事となっています。

1ヶ月単位の変形労働時間制は、月ごとにシフトを組んでいる企業や、月の中で繁閑差がある企業、あるいは隔週土曜日を出勤にしたい企業などに有効で、1年単位の変形労働時間制より、導入や運用がしやすいです。

1ヶ月単位の変形労働時間制とは

1ヶ月単位の変形労働時間制は、1ヶ月の中で繁閑差のある事業場で、忙しい週には、労働時間を長めに、暇な時間には労働時間を短めに設定することで、月の中で柔軟に労働時間の設定をすることで、総労働時間の削減や休日の増加を図ることができる制度です。

1ヶ月単位の変形労働時間制の導入の概要

導入には労使協定または就業規則への規定が必要

1ヶ月単位の変形労働時間制は、1ヶ月以内の一定期間を平均して週平均の労働時間が40時間(特例事業44時間)以内になるように設定することで、特定された週において1週40時間(44時間)、特定された日において1日8時間を超えて労働させても残業代は発生しません

特例事業とは
正式には「特例措置対象事業場」
常時使用する従業員数が10人未満の商業、映画・演劇業(映画の製作事業を除く)、保健衛生業、接客娯楽業は、週の労働時間の上限が44時間になります。

1ヶ月単位の変形労働時間制は、労使協定を締結して労働基準監督署に届け出るか、就業規則に規定することで導入ができます。

労使協定で1ヶ月単位の変形労働時間を導入する場合は、必ず労働基準監督署に届け出が必要ですが、就業規則は、労働者数が10人未満の事業所は、届け出は必須ではありません。

就業規則などに定める事項

1.対象となる労働者の範囲
2.変形期間
3.変形期間の起算日
4.変形期間における日・週ごとの労働時間

1.対象となる労働者の範囲

1ヶ月単位の変形労働時間制の適用を受ける労働者を定めます。
例:正社員全員、販売スタッフ、〇〇部の正社員など

2.変形期間

変形期間は1ヶ月以内であれば、必ずしも1ヶ月である必要はありませんが、給与計算を考えると1ヶ月にした方が事務的な負担が少なくなります

3.変形期間の起算日

変形期間の定めと同じで、給与計算を想定すると、起算日は給与締日の翌日にするのがおすすめです。

4.変形期間における日・週ごとの労働時間

前提として、変形期間の週平均の労働時間が40時間(特例事業44時間)以内になるようにしないといけませんので、変形期間の総労働時間の上限を確認する必要があります。

上限時間=40時間(44時間)×変形期間の暦日数÷7日
1ヶ月の労働時間上限
(厚生労働省「1ヶ月単位の変形労働時間制」リーフレットより)

この上限時間内におさまるように、変形期間内の労働日と週ごとの労働時間を決定します。

(変形期間内の労働時間設定例)
変形期間内の労働時間例(兵庫労働局HPより)

この例では、月末が忙しいので、1日の労働時間を8時間30分に設定し、休日も週1日にしています。その代わりに、月初に休みを多くとり、1~3週目は労働時間を1日7時間にしています。

なお、従業員に出勤日と休日を通知する際には、各日の始業時刻と終業時刻も明示する必要があります。(通常は、シフト表で明示することが多いです)

このあらかじめ定めた労働時間を、会社が業務の都合によって、任意に変更することは認められていません

ただし、あらかじめ就業規則(労使協定)に労働時間を変更する可能性があることと、変更する場合の具体的な理由が明示してある場合は、変更が認められる可能性があります。

1ヶ月単位の変形労働時間制の規定例

(第○条)1ヶ月単位の変形労働時間制

1.〇〇職にある従業員には、毎月○日を起算日とする1ヶ月単位の変形労働時間制による勤務をさせることがある。

2.前項の場合の所定労働時間は、1ヶ月を平均して週40時間以内とし、各日の労働時間は、つぎのとおりとする。

毎月1日~15日
始業時刻:○時○分 終業時刻:○時○分
休憩時間:○時○分~○時○分

毎月16日~末日
始業時刻:△時△分 終業時刻:△時△分
休憩時間:△時△分~△時△分

3.休日は、水曜日・日曜日とする。

所定労働時間を変更する可能性がある場合は、変更する可能性がある旨と、その具体的な理由も規定しておきます。

4.つぎに定める事由が生じた場合には、第2項に定める所定労働時間を変更することがある。変更する場合は、当該日の○日前までに、従業員に通知するものとする。
(1)・・・・
(2)・・・・

なお、上記2.のように始業・終業時刻があらかじめ特定できない場合は、下記のような規定の仕方ができます。

・始業・終業時刻、休憩時間は次のパターンの組み合わせによることとし、前月○日までにシフト表を作成して、従業員に通知する。

A勤務 始業時刻:○時○分 終業時刻:○時○分 休憩時間:○時○分~○時○分
B勤務 始業時刻:△時△分 終業時刻:△時△分 休憩時間:△時△分~△時△分
C勤務 ・・・
D勤務 ・・・

・休日はシフト表によって特定し、前月○日までに従業員に通知する。

1ヶ月単位の変形労働時間制の残業代について

1.~3.の順序で残業時間を算出し、残業代の計算を行ないます。

1.1日の残業時間
就業規則(または労使協定)で1日8時間を超える時間を定めた日はその時間を超えて、それ以外の日は8時間を超えて労働した時間が残業時間となります。

2.1週の残業時間
就業規則(または労使協定)労使協定で1週40時間(44時間)を超える時間を定めた週はその時間を超えて、それ以外の週は1週40時間(44時間)を超えて労働した時間が残業時間となります。

1.で残業時間としてカウントされている時間は除きます。

3.対象期間の残業時間
対象期間の法定労働時間の総枠(40時間(44時間)×対象期間の暦日数÷7)を超えて労働した時間

1.と2.で残業時間としてカウントされている時間は除きます。
(残業時間の計算例)
1ヶ月単位の変形労働時間 残業代計算1
1ヶ月単位の変形労働時間 残業代計算2(厚生労働省「リーフレットシリーズ 労基法32条の2」より)

まとめ

・1ヶ月単位の変形労働時間制は、変形労働時間制の基本とされており、導入も運用も他の変形労働時間制に比べると比較的容易です。

・隔週で6日出勤になる会社は、1ヶ月単位の変形労働時間制を導入することで、所定労働時間を法定内におさめられることもあります。

・事前に1ヶ月の出勤日(始業・終業時刻含む)と休日を通知していない場合など、運用が適切でない場合は、変形労働時間制が無効となってしまいますので注意してください。

1ヶ月単位の変形労働時間以外の労働時間制の概要は、こちらの記事を参考にしてください。
「変形労働時間制とはどのようなものか?種類と特徴をわかりやすく解説」