この記事は、
「変形労働時間制というのがあることを知っているが、詳しくはわからない。」
「うちの会社に、変形労働時間制って使うことができるの?」
「変形労働時間制をやるメリットはなに?逆に損することはないの?」
など、変形労働時間に対してこのような疑問をお持ちの方に向けた記事です。
この記事では、変形労働時間制の種類や特徴(メリット・デメリット)に加えて、フレックスタイム制や裁量労働制などの概要についてもお伝えしていきます。
さまざまな労働時間制などの概要とメリット・デメリットをつかんでいただき、変形労働時間制などを導入するための検討材料としていただければと思います。
変形労働時間制とは?
ご存知のように、所定労働時間の設定は、1日8時間、週40時間(特例事業は44時間)以内が原則です。
変形労働時間制を導入することで、この原則を守れているかどうかを一定の期間を単位として、判断することができます。
たとえば、4週間を変形労働時間制の一定の期間として設定した場合、最初の週や最終週に、週40時間以上の労働時間となったとしても、1カ月あたりの週平均労働時間が、40時間以内におさまっていれば、適法と判断するができます。
第1週 45時間
第2週 35時間
第3週 35時間
第4週 45時間
1週目と4週目は、40時間を超えていますが、4週間で平均すると40時間になり、週40時間以内労働の原則を守れていることになります。
変形労働時間制のメリットとデメリット
変形労働時間制のメリット
このように、変形労働時間制は労働時間の設定を比較的柔軟におこなえるので、1カ月や1年の中で、繁忙期と閑散期が読みやすい企業にとって、特にメリットがあります。
例えば、繁忙期に1日9時間、1週45時間という法律に定められた労働時間の原則を超えた、所定労働時間が設定可能です。
このような時間設定ができので、生産効率の向上や残業時間の削減(=残業代の削減)という効果が見込まれます。
また、従業員にとっても、閑散期は早く帰宅することができるなどのメリットがあります。通常の1日8時間・週40時間労働であれば、仕事が少ない日であっても、1日8時間は勤務せざるを得ません。
しかし、変形労働時間制で、閑散期の終業時刻が通常よりもはやく設定されていれば、気兼ねなく仕事を終えることができます。
もちろん繁忙期は労働時間が長くなりますが、忙しいときと、暇なときのメリハリをつけて働けるため、生産性の向上が見込まれます。
変形労働時間制のデメリット
変形労働時間制の導入や運用に手間がかかります。
導入にあたっては、従業員との労使協定の締結や就業規則作成(変更)、労働基準監督署への届け出が必要になる場合があります。
運用していくに際しては、シフト作成などによる勤務日や休日の事前通知が必要なったり、残業代の計算が複雑になったりします。
残業代の削減だけを目的に、表面上変形労働時間制を導入しているように見せかけても、適切に導入、運用をしなければ、変形労働時間制は無効となってしまいます。
例えば、就業規則に、1年単位の変形労働時間制が規定してあるものの、労働基準監督署に届け出をしていない、労働時間の管理をしてないといった例を非常に多く目にします。
適切に導入・運用できない(しない)のであれば、変形労働時間制の導入はすべきではありません。
このことを踏まえていただいたうえで、次に変形労働時間制の種類をみていきます。
変形労働時間制の種類
変形労働時間制は、変形期間の長さによって、次の3種類に分けられます。
・1カ月単位の定型変形労働時間制
・1年単位の定型変形労働時間制
1週間単位の非定型変形労働時間制
従業員数30人未満の小売・旅館・料理・飲食店の事業でのみ、導入ができる変形労働時間制です。
1週間の労働時間が40時間以内におさまるように、各日の労働時間を設定することができます。ただし、1日の労働時間の上限は10時間までです。
なかなか事前に、どのタイミングで忙しくなるのかがわからないという企業に、有効な変形労働時間制です。
1週間単位の非定型的変形労働時間制の導入についてなど、詳しい情報はこちらの記事が参考になります。
「飲食業・小売業の残業時間削減に効果!?【1週間単位の変形労働時間制】」
1ヶ月単位の変形労働時間制
従業員数や業種の制限はありません。
1ヶ月以内の一定の期間(必ずしも1ヶ月である必要はなく、4週間や2週間を変形期間として設定することができる)内で、平均して1週間の労働時間が40時間以内(特例事業44時間以内)におさまるように、各日の労働時間を設定することができます。
1日や1週間の労働時間に上限はありません。
月のなかで、繁閑差が出やすい業種や職種に適した変形労働時間制です。
1ヶ月単位の変形労働時間制の導入についてなど、詳しい情報はこちらの記事が参考になります。
「変形労働時間制(1ヶ月単位)の残業、届け出など規定例をまじえわかりやすく解説」
1年単位の変形労働時間制
従業員数や業種の制限はありません。
1年以内の一定の期間(必ずしも1年である必要はなく、1ヶ月以上~1年以内を変形期間として設定することができる)内で、平均して1週間の労働時間が40時間以内(特例事業の場合も40時間以内)におさまるように、各日の労働時間を設定することができます。
1日10時間、1週52時間が上限です。
その他、変形期間の長さによっても様々な制限があります。
年間をとおして、繁閑差の時期がはっきりしている業種・職種に適した変形労働時間制です。
1年単位の変形労働時間制の導入についてなど、詳しい情報はこちらの記事が参考になります。
「1年単位の変形労働時間制をわかりやすい資料をまじえながら解説」
その他の労働時間制度
フレックスタイム制
会社が最長3ヶ月の期間内で、総労働時間を設定し、毎日の始業・終業時刻や労働時間は、従業員が自分で決めて働けるという制度です。
1日のすべての労働時間を従業員の裁量に委ねることもできますが、一定の時間帯(例:午前10時~午後3時)は必ず就業するように定めることもできます。これをコアタイムといいます。
ホワイトカラー系の職種であれば、導入を検討しても良いのではないかと私は考えています。
フレックスタイム制の導入についてなど、詳しい情報はこちらの記事が参考になります。
「フレックスタイム制のコアタイムや残業代計算、就業規則の規定例を紹介」
専門業務型裁量労働時間制
専門性の高い業務で、その性質上、業務遂行の手段や方法、労働時間の配分などを従業員の裁量に委ねる必要がある業務に導入ができる制度です。
対象となる業務は法律で定められていて、全部で19種類あります。
たとえば、新商品・新技術の研究開発や衣服、室内装飾などの新たなデザイン考案、システムコンサルタント、弁護士や税理士などです。
業務の種類が該当すれば、小さな会社でも導入できる可能性があります。
企画業務型裁量労働時間制
事業運営上の重要な決定が行われる企業の本社などで、企画、立案、調査および分析を行う従業員を対象とした制度で、業務の遂行の手段や方法、労働時間の配分は、従業員の裁量に委ねられます。
小さな会社では、対象となる従業員はいないと考えて差し支えないです。
その他労働時間制度の注意点
・どの制度も、労働時間の配分などを従業員の裁量に委ねることになりますが、労働時間の管理を会社がしなくてよいというわけではありませんし、残業代の支給が不要になるわけではありません。
まとめ
さまざまな変形労働時間制や、その他の労働時間制度がありますが、導入した場合のメリット・デメリットを把握することはもちろん、何よりも、適切に運営できるかどうかをきちんと検討してから導入をしてください。