育児や介護と仕事を両立させたい人にとって、フルタイム勤務という時間の制約は大きな課題です。
家庭の事情でフルタイム勤務が困難になり、仕事を続けられなくなる人も多くいます。
そこで、育児介護休業法では、育児休業・介護休業以外にも、休暇制度や短時間勤務、あるいは時間外労働の免除などの措置を講じることが、企業に求められています。
また、これらの制度は法律で定められているだけでなく、今後、小さな会社でも優秀な人材を確保していくための武器になるはずです。
このことを踏まえ、この記事では、育児・介護休業以外の育児と介護に関する諸制度について、お伝えしていきます。
介護短時間勤務制度などの措置に共通する言葉
介護関係の措置の対象となる
「要介護状態にある対象家族」とは、次のような状態と続柄を意味します。
ケガや病気、身体的・精神的な障害によって、2週間以上にわったて常時介護が必要な状態
(常時介護=歩行や排泄、食事、入浴、着脱衣など日常生活の介助が必要)
配偶者(事実上の婚姻関係でも可)、子、父母、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫
子の看護休暇制度・介護休暇制度
子の看護休暇制度
子どもが小学校就学前までの場合、病気やケガの看護、予防接種などを受けさせるために、1年度に5日(2人以上の場合は10日)を限度として、休暇が取得できる制度。
介護休暇制度
要介護状態にある対象家族の介護やその世話を行なうために、1年度に5日(2人以上の場合は10日)を限度として、休暇が取得できる制度。
育児介護のための短時間勤務などの措置
育児のための短時間勤務など
3歳未満の子がいる従業員について、本人が希望した場合は、1日の所定労働時間を原則6時間に短縮して、短時間勤務にすることが義務づけられています。
始業時刻を遅くする、終業時刻をはやめるなど、どのように6時間に短縮するかは、個々の会社で定めることになっています。
以下のいずれかに該当する従業員は、労使協定を締結することで、所定労働時間の短縮措置の対象外とすることも可能です。
2.1週間の所定労働日数が2日以下の場合
3.業務の性質や内容から時間短縮の措置が困難な業務に就いている場合
→・従事している従業員が著しく少ない業務
・個人ごとの担当企業・エリア等が厳密に分担されていて、代替が困難な営業の業務
などが該当します。
ただし、3.に関しては、所定労働時間短縮の代わりに、次の4つのうちいずれかの措置を講じる必要があります。
1.育児休業に準ずる措置
2.フレックスタイム制
3.始業・終業時刻の繰り下げ、繰り上げ
4.保育施設の設置やこれに準ずる措置
介護のための短時間勤務など
家族を介護する従業員のために、次の4つのうちいずれかの措置を講じる必要があります。(対象家族一人につき連続3年以上の間で、2回以上の利用を認めること)
→6時間でなくとも良いです。効果はさておき7時間でもOKです。
2.フレックスタイム制
3.始業・終業時刻の繰り下げ、繰り上げ
4.介護サービス費用の助成やこれに準ずる措置
以下のいずれかに該当する従業員は、労使協定を締結することで、所定労働時間の短縮措置などの対象外とすることも可能です。
2.1週間の所定労働日数が2日以下の場合
育児介護のための所定外労働(残業)の免除
3歳未満の子がいる(または、家族を介護する)従業員が、請求したときは、所定外労働(残業)をさせてはいけません。
ただし、事業の正常な運営を妨げるときは、請求を拒否することができます。
従業員の担当する作業の内容や繁閑、代替要員が配置可能かなどの事情を考慮して客観的に判断することになります。
単に、残業が業務上必要だという理由だけで拒むことはできません。
ただし、小さな会社の場合、納期がひっ迫しているだけでも十分な理由になると、個人的には考えます。
参考:「厚生労働省:両立支援のひろば」
以下のいずれかに該当する従業員は、労使協定を締結することで、所定外労働の制限措置の対象外とすることも可能です。
2.1週間の所定労働日数が2日以下の場合
育児介護のための所定外労働(残業)の制限
所定外労働と(法定)時間外労働の違い
所定外労働は、会社で定められた「所定労働時間」を超えて働くこと、
時間外労働は、法律で定められた「1日8時間、1週40時間」を超えて働くこと。
例えば、所定労働時間が、1日7時間30分の会社であれば、7時間30分を超えて働くことが所定外労働となります。8時間を超えると、所定外労働であり、(法定)時間外労働となります。
育児介護のための時間外労働の制限は、(法定)時間外労働の制限です。
小学校就学前の子がいる(または、家族を介護する)従業員が、請求したときは、1ヶ月24時間、1年150時間を超えて、時間外労働をさせることができません。
ただし、事業の正常な運営を妨げるときは、請求を拒否することができます。
以下のいずれかに該当する従業員は、労使協定を締結することで、時間外労働の制限措置の対象外とすることも可能です。
2.1週間の所定労働日数が2日以下の場合
育児介護のための深夜業の制限
小学校就学前の子がいる(または、家族を介護する)従業員が、請求したときは、深夜(午後10時~午前5時)に勤務をさせることができません。
ただし、事業の正常な運営を妨げるときは、請求を拒否することができます。
以下のいずれかに該当する従業員は、労使協定を締結することで、深夜業の制限措置の対象外とすることも可能です。
2.1週間の所定労働日数が2日以下の場合
3.所定労働時間のすべてが深夜の場合
4.介護ができる同居の家族がいる場合
転勤についての配慮
転勤させる場合には、子どもの養育の状況や家族の介護の状況に配慮する義務があります。
不利益な取り扱いの禁止
育児や介護に関する制度や措置の申し出や利用を理由として、解雇やその他の不利益な取り扱いをすることは禁止されています。
ハラスメントの防止措置
育児や介護に関する制度や措置の申し出や利用に関して、ハラスメントを防止する措置が義務づけられています。
ハラスメントの防止措置は、こちらの記事を参考にしてください。
「職場でのマタハラやイクハラへの対策が法律で義務化されています。」
なお、育児休業に関する記事はこちらです。
「育児休業中の社会保険料免除や男性の育児休業など育児休業の基礎を解説」
まとめ
この記事でご紹介した様々な措置は、法律で決められていることなので、ほとんどの企業の就業規則や育児介護休業規程に規定はされています。
しかし、実際に従業員さんが活用されていることは稀です。
このような状況ですので、例えば、これらの措置と短時間正社員制度を組み合わせることで、一つの仕事を複数人でシェアする仕組みを作れば、フルタイムで働くことができない優秀な人材を確保することができるかもしれません。
「法律だから仕方なく」ではなく、どうすれば「うまく活用できるのか?」を考えてみることをおすすめします。