少子高齢化が急速に進んでいるなか、親の介護を理由として仕事を辞めざるを得ない人がたくさんいます。
これは、本人にとっても会社にとっても、そして社会全体にとっても大きな損失です。
そこで、仕事と介護を両立していくことができる環境を整えることが、社会的な課題となっています。
そのための1つの施策として、介護休業制度の充実があります。
介護休業制度は、育児介護休業法に規定されているもので、数年に1度改正が行われており、小さな会社にとっては、最新の状況を把握するのに、非常に手間がかかります。
そこで、この記事では2020年現在最新の介護休業やその他介護に関する最新の法令の状況と、2021年度の法改正にも触れてお伝えしていきます。
介護休業が取得できる条件とは?
介護が必要な家族のために、従業員の申し出により取得が可能な介護のための休業です。
対象となる家族1人につき、通算で93日、3回を上限に分割しての取得も可能です。
有期契約の従業員(パートタイマーなどで雇用契約期間に定めのある従業員)でも取得が可能。
介護が必要な家族とは?
配偶者(事実上の婚姻関係でも可)、子、父母、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫
ケガや病気、身体的・精神的な障害によって、2週間以上にわったて常時介護が必要な状態
(常時介護=歩行や排泄、食事、入浴、着脱衣などの日常生活に介助が必要)
介護休業が取得できない従業員
介護休業はすべての従業員が取得できるわけではなく、一定の要件に該当する従業員は、介護休業を取得することができません。
1.有期契約の従業員(パートタイマーなどで雇用契約期間に定めのある従業員)のうち、次の①か②に該当する人は、介護休業を取得することができません。
②介護休業開始日から93日+6ヶ月(約9ヶ月)を経過する日までに契約期間が満了し、契約が更新されないことが明らかな場合
2.労使協定を締結した場合は、全従業員のうち、次の①~③のいずれかに該当する人は、介護休業を取得することができません。
②介護休業を申し出た日から93日以内に雇用関係が終了することが明らかな場合
③1週間の所定労働日数が2日以下の場合
介護休業の期間
対象となる家族一人につき、最長93日間までで、従業員が申し出た期間が介護休業期間となります。
また、3回までであれば、分割して介護休業を取得することができます。この場合は、通算93日間までの取得が可能です。
介護休業期間中の給与
介護休業期間中の給与は無給で問題ありません。
雇用保険に加入していて、一定の条件を満たしている従業員には、介護休業給付金が支給されます。
介護休業給付金についての詳細はこちらの記事を参考にしてください。
「介護休業給付金とはどのようなものか、パートも支給の対象となる?」
介護休業期間中の社会保険料は?
介護休業中であっても、社会保険料は通常どおりかかってきます。
介護休業期間中は、給与の支払いを行わないケースが多いですので、個人負担分の社会保険料を給与から天引きできない場合の取り扱いについて、就業規則や介護休業規程で定めておく必要があります。
個人負担分の社会保険料の取り扱いについては、
・毎月、会社が従業員に請求を行い会社に支払ってもらう。
・復職後、毎月支給される給与から(場合によっては分割して)天引きする。
といった方法が考えられます。
介護休業と介護休暇の違い
ここまで介護休業についてご説明していきましたが、介護休業と言葉が似ている制度で、「介護休暇」という制度があります。
たまに、この介護”休業”と介護”休暇”をごちゃまぜに理解されている経営者の方がいらっしゃいますので、違いをご説明しておきます。
介護休業 | 介護休暇 | |
期間 | 対象家族1人につき93日 (3回まで分割取得可能) |
対象家族1人につき1年に5日 (対象家族が複数の場合1年に10日) |
給与 | 支払い義務なし | 支払い義務なし |
給付 | 介護休業給付金 | 給付金制度なし |
一番大きいのは、雇用保険の給付(介護休業給付金)の有無です。介護休業には、給与の保障がありますが、介護休暇にはありません。
これは、介護休業は計画的に月単位での休業取得を想定しているのに対し、介護休暇は突発的な事態が起こった際に取得することを想定しているからです。
実際には、介護休暇を利用するようなケースは、有給休暇の取得を希望する従業員さんも多いのではないかと思われます。
ですので、介護休暇の活用があまり進んでいないのではないかと、個人的には考えています。
なお、介護休暇については、2021年1月から制度の改正がありますので、こちらの記事を参考にしてください。
「看護休暇・介護休暇が時間単位で取得可能に!改正点や規定例をご紹介」
介護休業のほか法律で定められた介護支援制度
・短時間勤務等の措置
・所定外労働(残業)の制限
・深夜業の制限
上記の介護休業以外の介護に関する措置の詳細説明
「育児や介護の短時間勤務の期間や休暇・残業免除制度について解説します。」
介護休業等に関するハラスメントの防止措置の詳細説明
「職場でのマタハラやイクハラへの対策が法律で義務化されています。」
まとめ
今後、仕事と介護を両立させたいという人が、どんどん増えていきます。
ですので、「うちみたいな小さな会社では無理」では、人材の確保が難しい時代になってきていると言えます。
介護休業制度などの規定上の導入だけでなく、従業員の雇用形態の見直しなど、全体的な人材活用を本気で考え、実際に休業が取れるように取り組んでいく必要があります。