就業規則のテンプレート(厚生労働省版)を中小企業向けに作り変えるための解説

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就業規則テンプレート

この記事では、厚生労働省の「スタートアップ労働条件」というサイトで提供されている、就業規則のテンプレートを用いて、中小零細企業向けに作り変えていくための解説を行います。

このサイトは非常によくできていて、インターネット上で就業規則が作成できてしまうという優れものです。ワードが苦手という方でも安心です。

ただ、賃金規程や育児・介護休暇規程、パートタイマー用の就業規則などを別規程として作成できないという残念な面もあります。

でも、それを差し引いても、非常に良いツールですので、ぜひ活用していきましょう。

テンプレートの規定内容をすべてそのまま使ってしまうと、会社のリスク面を考えた場合に不足があったり、小さな会社にとってみると、負担が大きいだろうなという規定もありますので、この記事を読みながらオリジナルの就業規則が作れるように、一条ごとに解説をしていきます。

解説をしていく前に、この記事のスタンスをお伝えしておきます

就業規則のご相談を受けたときに、「うちは小さな会社だから、シンプルで簡単な就業規則でいいので。」とおっしゃる経営者の方が、たまにいらっしゃいます。

その意図は、極力条文を少なくして、抽象的な表現にしておくことで、「会社側が様々な解釈をできるように。」というものです。

しかし、そんな都合の良いことはできません。

仮にトラブルがあった場合、最終的に就業規則の条文の解釈をするのは、会社でも従業員でもありません。解釈をするのは裁判官です。

多くの場合、裁判官は会社の有利なように解釈はしてくれません。
つまり、抽象的であいまいな就業規則を作っていたとしても、会社が有利になることはありえないということです。

このことを念頭においておいてください。

また、日常においても、就業規則であいまいな表現をしていることよって、従業員と会社の解釈だけでなく、従業員同士でも解釈のギャップが生まれ、トラブルの原因になりかねません。

ですので、この記事では、「必要なことはすべてきちんと規定し、不必要なものは削る。」このようなスタンスで解説をしていきます。

就業規則の全文(テンプレートの原文)はこちらです。
就業規則テンプレート全文ダウンロード

  1. 厚生労働省の就業規則テンプレートをカスタマイズ
    1. 第1章 総則
      1. 第1条(目的)
      2. 第2条(適用範囲)
      3. 第3条(規則の遵守)
    2. 第2章 採用・異動
      1. 第4条(採用手続)
      2. 第5条(採用時の提出書類)
      3. 第6条(試用期間)
      4. 第7条(労働条件の明示)
      5. 第8条(人事異動)
      6. 第9条(休職)
    3. 第3章 服務規律
      1. 第10条(服務)
      2. 第11条(遵守事項)
      3. 第12条(職場のパワーハラスメントの禁止)
      4. 第13条(セクシャルハラスメントの禁止)
      5. 第14条(妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメントの禁止)
      6. 第15条(その他あらゆるハラスメントの禁止)
      7. 第16条(個人情報保護)
      8. 第17条(始業及び終業時刻の記録)
      9. 第18条(遅刻、早退、欠勤等)
    4. 第4章 労働時間、休憩及び休日
      1. 第19条(労働時間及び休憩時間)
      2. 第20条(休日)
      3. 第21条(時間外及び休日労働等)
    5. 第5章 休暇等
      1. 第22条(年次有給休暇)
      2. 第23条(年次有給休暇の時間単位での付与)
      3. 第24条(産前産後の休業)
      4. 第25条(母性健康管理の措置)
      5. 第26条(育児時間及び生理休暇)
      6. 第27条(育児・介護休業、子の看護休暇等)
      7. 第28条(慶弔休暇)
      8. 第29条(病気休暇)
      9. 第30条(裁判員等のための休暇)
    6. 第6章 賃金
      1. 第31条(賃金の構成)
      2. 第32条(基本給)
      3. 第33条(家族手当)
      4. 第34条(通勤手当)
      5. 第35条(役付手当)
      6. 第36条(技能・資格手当)
      7. 第37条(精勤手当)
      8. 第38条(割増賃金)
      9. 第39条(1年単位の変形労働時間制に関する賃金の精算)
      10. 第40条(代替休暇)
      11. 第41条(休暇等の賃金)
      12. 第42条(臨時休業の賃金)
      13. 第43条(欠勤等の扱い)
      14. 第44条(賃金の計算期間及び支払日)
      15. 第45条(賃金の計算期間及び支払日)
      16. 第46条(賃金の非常時払い)
      17. 第47条(昇給)
      18. 第48条(賞与)
    7. 第7章 定年、退職及び解雇
      1. 第49条(定年等)
      2. 第50条(退職)
      3. 第51条(解雇)
    8. 第8章 退職金
      1. 第52条(退職金の支給)
      2. 第53条(退職金の額)
      3. 第54条(退職金の支払方法及び支払時期)
    9. 第9章 無期労働契約への転換
      1. 第55条(無期労働契約への転換)
    10. 第10章 安全衛生及び災害補償
      1. 第56条(遵守事項)
      2. 第57条(健康診断)
      3. 第58条(長時間労働者に対する面接指導)
      4. 第59条(ストレスチェック)
      5. 第60条(健康管理上の個人情報の取扱い)
      6. 第61条(安全衛生教育)
      7. 第62条(災害補償)
    11. 第11章 職業訓練
      1. 第63条(教育訓練)
    12. 第12章 表彰及び制裁
      1. 第64条(表彰)
      2. 第65条(懲戒の種類)
      3. 第66条(懲戒の事由)
    13. 第13章 公益通報者保護
      1. 第67条(公益通報者の保護)
    14. 第14章 副業・兼業
      1. 第68条(副業・兼業)

厚生労働省の就業規則テンプレートをカスタマイズ

第1章 総則

第1条(目的)

この就業規則(以下「規則」という。)は、労働基準法(以下「労基法」という。)第89条に基づき、株式会社〇〇(以下「会社」という。」の労働者の就業に関する事項を定めるものである。

2 この規則に定めた事項のほか、就業に関する事項については、労基法その他の法令の定めによる。

【解説】

第2項 「この規則に定めた事項のほか・・・定めによる。」は削除しておく方が良いです。

労働基準法をはじめとして、労働安全衛生法や労働契約法などの法律(まとめて「労働法」と呼びます。)には、義務だけでなく、努力義務や啓発的な規定も数多くあります。

そのような規定などもすべて遵守するというのは、小さな会社にとっては非常に大きな負担になりますので、第2項は削除することをオススメしています。

第2条(適用範囲)

この規則は、会社の労働者に適用する。

2 パートタイム労働者の就業に関する事項については、別に定めるところによる。

3 前項については、別に定める規則に定めのない事項は、この規則を適用する。

【解説】

この就業規則が、”誰”に適用されるものかを明示した条文です。

このテンプレートでは、雇用形態の違いによる従業員の「定義」が明示されていませんので、従業員の「定義」を追加しておくことをオススメします。

雇用形態ごとに該当する従業員を定義し、雇用形態に分けた就業規則を作成する方が、会社のリスクを軽減できます。

一つの就業規則で、条文ごとに「本条はパートタイマーには適用しない。」といった分け方をしているケースがありますが、もし、この一文を書き忘れてしまえば、全従業員に適用されることになります。

また、同一労働同一賃金のことを考えると、全従業員を一つの就業規則でくくってしまうのは、それだけ正社員とその他の従業員に「差」がないという印象を与えてしまう可能性があります。

従業員の定義例:

【正社員】
雇用契約の期間の定めなく、フルタイム勤務する従業員

【有期パートタイマー】
雇用契約の期間の定めがあり、1週間の所定労働時間が30時間未満の従業員

【無期パートタイマー】
雇用期間の定めない従業員(正社員を除く)で、1週間の所定労働時間が30時間未満の従業員

無期雇用転換ルールに該当した場合を想定しています。
有期労働契約が5年を超えて更新された場合、 有期契約労働者(契約社員、アルバイトなど)からの申込みにより、期間の定めのない労働契約 (無期労働契約)に転換されるルールのこと。会社は拒否することはできません。

【嘱託社員】
定年退職後に再雇用された従業員。勤務時間、勤務日数は個別の契約による。

このように従業員の定義を規定をしたうえで、『この就業規則は、正社員にのみ適用する』とします。

『2.パートタイム労働者の就業に関する事項については、別に定めるところによる。』

このような規定をしておきながら、実際は別規定がないというケースを多く見ます。

別規定がない場合は、本就業規則の内容が適用されてしまう可能性が高いので、注意が必要です。

第3条(規則の遵守)

会社は、この規則に定める労働条件により、労働者に就業させる義務を負う。また、労働者は、この規則を遵守しなければならない。

【解説】

このままで問題ありません。

第2章 採用・異動

第4条(採用手続)

会社は、入社を希望する者の中から選考試験を行い、これに合格した者を採用する。

【解説】

採用選考時に提出してもらいたい書類などがある場合は、本条もしくは、別の条を追加して規定をしておきます。

採用選考時に提出してもらう書類などの例:

・履歴書(直近3ヶ月以内撮影の写真貼付)
・学校の卒業証明書または、卒業見込証明書
・学校成績表
・健康診断書(直近3ヶ月以内)
・資格証明書など

また、選考後のこれらの書類の取り扱いについても規定しておくことも検討してください。
取り扱い方法としては、「返却」や「廃棄」が考えられます。

第5条(採用時の提出書類)

労働者として採用された者は、採用された日から○週間以内に次の書類を提出しなければならない。
(1)住民票記載事項証明書
(2)自動車運転免許証の写し(ただし、自動車運転免許証を有する場合に限る。)
(3)資格証明書の写し(ただし、何らかの資格証明書を有する場合に限る。)
(4)その他会社が指定するもの

2 前項の定めにより提出した書類の記載事項に変更を生じたときは、速やかに書面で会社に変更事項を届け出なければならない。

【解説】

採用が決まった場合に提出してもらう書類です。

可能であれば初出社日前までに提出してもらいたいところですが、採用後数日~1週間以内としているケースが多いです。

テンプレート記載以外で、規定することが多い書類など
・誓約書
・身元保証書(原則として親権者または親族人に限る)
・機密保持誓約書
・泉徴収票(暦年内に前職のある者のみ)
・給与所得者の扶養控除等申告書
・年金手帳、雇用保険被保険者証(所持者のみ)
・マイナンバーが確認できるもの

さらに、採用を決定してから入社日までに期間がある場合は、内定という形になりますが、入社日までの間に、内定を取り消す場合があるという内容を盛り込むケースもあります。

採用内定者が次の各号のいずれかに該当する場合は、内定を取り消し採用しない。
(1)採用の前提となる条件が達成されなかったとき(卒業、免許の取得等)
(2)入社日までに健康状態が採用選考時より低下し、勤務に耐えられないと会社が判断したとき
(3)履歴書等の提出書類の記載事項に偽りがあったとき
(4)採用内定後に犯罪、その他社会的に不名誉な行為を行ったとき、または採用選考時に過去の行為を秘匿していたことが判明したとき
(5)前条に定める採用選考時には予想できなかった会社の経営環境の悪化、事業運営の見直しが行われたとき
(6)その他前各号に準じる、またはやむを得ない事由があるとき

第6条(試用期間)

労働者として新たに採用した者については、採用した日から○か月間を試用期間とする。

2 前項について、会社が特に認めたときは、試用期間を短縮し、又は設けないことがある。

3 試用期間中に労働者として不適格と認めた者は、解雇することがある。ただし、入社後14日を経過した者については、第51条第2項に定める手続によって行う。

4 試用期間は、勤続年数に通算する。

【解説】

『1 試用期間の長さ』

試用期間は、3ヶ月に設定している会社が多い印象です。長い会社で6ヶ月です。

『3 試用期間中に労働者として不適格と認めた者は、解雇することがある。ただし、入社後14日を経過した者については、第51条第2項(普通解雇)に定める手続によって行う。』

注意しないといけないのは、入社後14日以内であれば、些細な理由でも「解雇ができる」というわけではありません。あくまでも、30日前の解雇予告などが不要なだけです。
詳細については、こちらの記事が参考になります。
「正社員を解雇するには?解雇予告、給料の保障など気をつけることは?」

試用期間中に「不適格と認めた者」という一語をより、具体的に記載したほうが、従業員にとってわかりやすいです。

例:
(1)遅刻および早退並びに欠勤が多い等、出勤状態が悪いとき
(2)上司の指示に従わない、同僚との協調性がない、やる気がない等、勤務態度が悪いとき
(3)必要な教育は施したが会社が求める能力に足りず、また改善の見込みも薄い等、能力不足が認められるとき
(4)重要な経歴を偽ったとき
(5)必要書類を提出しないとき
(6)健康状態が悪く、勤務に耐えられないと会社が判断したとき(精神の状態含む)
(7)その他前各号に準じる、または解雇事由に該当するとき

『試用期間の延長』についての規定を追加した方が良いです。

もともとの試用期間だけでは、本採用の決定ができないこともありえます。そこで、試用期間を延長できる規定を設けておくことをオススメします。

会社は、試用期間満了までに試用期間中の従業員の適性等を考慮した上で、最長1年間まで試用期間を延長することができる。

第7条(労働条件の明示)

会社は、労働者を採用するとき、採用時の賃金、就業場所、従事する業務、労働時間、休日、その他の労働条件を記した労働条件通知書及びこの規則を交付して労働条件を明示するものとする。

【解説】

労働条件を明示すること、明示は原則書面で行うことは、法律で定められていますが、あらためて就業規則に規定する必要はないかと、個人的には考えます。

第8条(人事異動)

会社は、業務上必要がある場合に、労働者に対して就業する場所及び従事する業務の変更を命ずることがある。

2 会社は、業務上必要がある場合に、労働者を在籍のまま関係会社へ出向させることがある。

3 前2項の場合、労働者は正当な理由なくこれを拒むことはできない。

【解説】

第1項

出張や転勤、職種の変更についての規定です。
会社が業務上の理由で、就業場所や従事する業務を変更することに関しては、就業規則に規定がなくとも、会社の指揮命令権の範囲に含まれるとされています。(個別の特別な合意等ある場合は除く。)

ですので、この規定はなくても良いのですが、従業員に出張などがあることを認識してもらうために設けてあります。

転勤の場合には、従業員の育児や介護の状況に配慮しなければならないとされています。
第2項
いわゆる『在籍出向』についての規定です。
在籍出向については、会社の指揮命令権に、当然には含まれないという見解もあることから、この規定を設けています。
注意点
『在籍出向』ではなく、『転籍出向(単に転籍という場合も)』の場合は、元の会社に籍がなくなることから、従業員の個別同意が必要です。
出向と転籍の違いや労災保険、雇用保険、社会保険の取り扱いについては、こちらの記事が参考になります。
「出向と転籍の違いは?雇用保険や社会保険の扱いはどうなる?」

第9条(休職)

労働者が、次のいずれかに該当するときは、所定の期間休職とする。
(1)業務外の傷病による欠勤が○か月を超え、なお療養を継続する必要があるため勤務できないとき ・・・○年以内
(2)前号のほか、特別な事情があり休職させることが適当と認められるとき・・・必要な期間

2 休職期間中に休職事由が消滅したときは、原則として元の職務に復帰させる。ただし、元の職務に復帰させることが困難又は不適当な場合には、他の職務に就かせることがある。

3 第1項第1号により休職し、休職期間が満了してもなお傷病が治癒せず就業が困難な場合は、休職期間の満了をもって退職とする。

【解説】

休職は、業務外のケガや病気などで、長期間働くことができない場合に、会社に従業員として在籍をしたまま、一定期間労働を免除するものです。

休職については、労働基準法などの法律によって、休職に該当する事由、休職期間、給与の取り扱いなどは一切定められていません

休職制度を設ける、設けないも会社の任意です。ただ、多くの会社では休職制度が設けられています。

それは、優秀な人材・労働力の確保や、私傷病を理由にした解雇をする前の猶予期間といった目的があるためです。

ですので、休職の規定はその目的を果たせるものにしないといけませんが、このテンプレートの規定だけでは、不十分な点が多いので、こちらの記事を参考にしてみてください。
→「現在作成中」

第3章 服務規律

第10条(服務)

労働者は、職務上の責任を自覚し、誠実に職務を遂行するとともに、会社の指示命令に従い、職務能率の向上及び職場秩序の維持に努めなければならない。

【解説】

このままで問題ありません。

第11条(遵守事項)

労働者は、以下の事項を守らなければならない。
(1) 許可なく職務以外の目的で会社の施設、物品等を使用しないこと。
(2) 職務に関連して自己の利益を図り、又は他より不当に金品を借用し、若しくは贈与を受ける等不正な行為を行わないこと。
(3)勤務中は職務に専念し、正当な理由なく勤務場所を離れないこと。
(4)会社の名誉や信用を損なう行為をしないこと。
(5)在職中及び退職後においても、業務上知り得た会社、取引先等の機密を漏洩しないこと。
(6)酒気を帯びて就業しないこと。
(7)その他労働者としてふさわしくない行為をしないこと。

【解説】

会社で守って欲しいこと、仕事をするうえで特に気をつけて欲しいことがあれば、追加していきます。

参考までに、こちらの記事で服務規律の規定集を公開していますので、自社にあったものを選択して就業規則に規定していただいても良いかと思います。
「選んでそのまま使える服務規律の規定例、就業規則づくりにオススメ」

第12条(職場のパワーハラスメントの禁止)

職務上の地位や人間関係などの職場内の優越的な関係を背景とした、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により、他の労働者の就業環境を害するようなことをしてはならない。

【解説】

第11条の遵守事項の一項目として記載しても差し支えありませんが、特に注意してほしい場合は、テンプレートのように別条として扱っても良いでしょう。

なお、パワーハラスメントを防止するための措置を講じることが義務化され、中小企業では、2022年4月1日から施行されます。

パワーハラスメント防止法に関しては、こちらの記事を参考にしてください。
→「現在作成中」

第13条(セクシャルハラスメントの禁止)

性的言動により、他の労働者に不利益や不快感を与えたり、就業環境を害するようなことをしてはならない。

【解説】

前条のパワハラと同様です。また、パワハラやセクハラ、その他のハラスメントの禁止を一つの条として、(ハラスメントの禁止)と規定することも一つの方法です。

なお、セクハラについては、男女雇用機会均等法により、企業の防止対策が義務化されていますが、さらに2020年6月1日から対策の強化が図られています。

セクハラの防止に関しては、こちらの記事を参考にしてください。
「セクハラを職場で発生させないための法律とは?最新の法改正にも対応!」

第14条(妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメントの禁止)

妊娠・出産等に関する言動及び妊娠・出産・育児・介護等に関する制度又は措置の利用に関する言動により、他の労働者の就業環境を害するようなことをしてはならない。

【解説】

いわゆる「マタハラ、イクハラ、パタハラ」などを禁止する規定です。
妊娠や出産、育児・介護休業などに関するハラスメントを防止するための措置を講じることが、義務化されています。

第15条(その他あらゆるハラスメントの禁止)

第12条から前条までに規定するもののほか、性的指向・性自認に関する言動によるものなど職場におけるあらゆるハラスメントにより、他の労働者の就業環境を害するようなことをしてはならない。

【解説】

ハラスメントに関しては、就業規則に規定することも大切ですが、日頃のハラスメントに対する意識づけや、防止策の徹底が重要です。

・会社としてどのように、ハラスメント防止に取り組んでいくのかを従業員に伝えること
・どのようなケースがハラスメントに該当するのか、どのような点に気をつければ良いのかなどを研修などをとおして伝えていくこと
など

第16条(個人情報保護)

労働者は、会社及び取引先等に関する情報の管理に十分注意を払うとともに、自らの業務に関係のない情報を不当に取得してはならない。

2 労働者は、職場又は職種を異動あるいは退職するに際して、自らが管理していた会社及び取引先等に関するデータ・情報書類等を速やかに返却しなければならない。

【解説】

個人情報は非常に利用価値の高いもので、その個人情報を取り扱う場合には厳格な管理が求められています。

2017年5月30日に個人情報保護保護法が改正され、個人情報を取り扱うすべての事業者が、個人情報保護法の対象となっています。

個人情報には、従業員の氏名も含みますので、日本中のほとんどの企業が、個人情報保護法を遵守しなければならいことになります。

ただ、その中でも、従業員以外の個人情報を多く取り扱う事業(例えば、美容室、飲食店、クリーニング店やクリニック、保険代理店など)を行っている場合は、個人情報保護法について理解し、就業規則のこの規定だけではなく、「個人情報取扱規程」を定めるなどの対応で、従業員の意識を高めていく必要があります。

個人情報の漏洩は、事業に致命的なダメージを与えかねません。

個人情報保護法については、こちらの記事を参考にしてください。
「個人情報保護法違反による罰則は?そもそも保護対象の個人情報とは?」

第17条(始業及び終業時刻の記録)

労働者は、始業及び終業時にタイムカードを自ら打刻し、始業及び終業の時刻を記録しなければならない。

【解説】

自社の労働時間管理の仕方(タイムカードの他に、出勤簿や勤怠管理システムなど)にあわせて変更してください。

なお、会社は、労働時間を適正に把握し、労働時間を適切に管理する責務があります。

労働時間の管理は、法律で決められていることではありますが、それ以上に働く側になってみると、労働時間の管理を会社がしない=残業代が支払われない、どれだけ働いても評価されないという印象を与えかねません。

また、従業員からの残業代請求で裁判となった場合、労働時間の管理をしない会社は、裁判官の印象が、とても悪いものになってしまう可能性が非常に高いです。

残業代の請求は、退職した従業員から突然やってくるので、「うちは大丈夫」という変な自信はもたないようにしましょう・・・
たまに、タイムカードの打刻を、「始業開始10分前までにすること。」といった規定を見ることがありますが、このような規定をした場合は、始業10分前から労働時間が換算されることになる可能性が非常に高いので、規定の仕方に注意が必要です。

第18条(遅刻、早退、欠勤等)

労働者は遅刻、早退若しくは欠勤をし、又は勤務時間中に私用で事業場から外出する際は、事前に△△に対し申し出るとともに、承認を受けなければならない。ただし、やむを得ない理由で事前に申し出ることができなかった場合は、事後に速やかに届出をし、承認を得なければならない。

2 前項の場合は、第43条に定めるところにより、原則として不就労分に対応する賃金は控除する。

3 傷病のため継続して○日以上欠勤するときは、医師の診断書を提出しなければならない。

【解説】

第3項
テンプレートでは、継続して欠勤した場合を想定していますが、継続を条件にしてしまうと、断続的に欠勤を繰り返す従業員に対応できません。

そこで、「傷病のために欠勤する場合は、医師の診断書の提出を求めることがある。」と規定する方法があります。

第4章 労働時間、休憩及び休日

第19条(労働時間及び休憩時間)

労働時間は、1週間については40時間、1日については8時間とする。

2 始業・終業の時刻及び休憩時間は、次のとおりとする。ただし、業務の都合その他やむを得ない事情により、これらを繰り上げ、又は繰り下げることがある。この場合、○日前までに労働者に通知する。

○始業・終業時刻
始業  午前  時  分
終業  午後  時  分

○休憩時間
時  分から  時  分まで

【解説】

テンプレートには、交代勤務の場合や変形労働時間制を導入する場合の規定例があります。自社の実情に合わせて、最適な所定労働時間の設定を行いましょう。

小さな会社で活用できる労働時間制度としては、以下のものがあります。

1.労働時間の原則:1日8時間、週40時間、週休2日

あくまでも、1日8時間以内、週40時間以内、かつ週1日以上休みがあるのであれば良いので、変形労働時間制を使わなくても良いケースがあります。

例えば、1日6.5時間、週39時間、週休1日という設定の仕方も可能です。

なお、従業員数が10人未満で、商業、映画・演劇業(映画の製作事業を除く)、保健衛生業、接客娯楽業を営む事業所の場合は、週の労働時間の上限が44時間になります。

2.変形労働時間制

変形労働時間制とは、1か月単位や1年単位の一定の期間内の労働時間を平均して、1日8時間・週40時間以内にすることで、1日8時間超、1週40時間超の所定労働時間を設定できる制度です。

変形労働時間制の適用を受けるためには、就業規則等への規定や労働者への周知、労使協定等の締結、労働基準監督署への届け出が必要になる場合があります。

変形労働時間制の全体的な説明は、こちらの記事を参考にしてください。
「変形労働時間制とはどのようなものか?種類と特徴をわかりやすく解説」

1年単位の変形労働時間制
年間の繁閑期がはっきりとしている会社は活用しやすい制度です。
「1年単位の変形労働時間制をわかりやすい資料をまじえながら解説」

1ヶ月単位の変形労働時間制
月内で繁閑期がはっきりとしている会社は活用しやすい制度です。
「1ヶ月単位の変形労働時間制の残業、届け出など規定例をまじえわかりやすく解説」

1週間単位の非定型的変形労働時間制
常時使用する従業員数が30人未満で、小売業、旅館、料理・飲食店の事業を営んでいる場合のみ、活用できる変形労働時間制です。
「飲食業・小売業の残業時間削減に効果!?【1週間単位の変形労働時間制】」

フレックスタイム制
従業員に自分で始業・終業時刻、1日の労働時間を決めさせる制度です。
「フレックスタイム制のコアタイムや残業代計算、就業規則の規定例を紹介」

専門業務型裁量労働制
情報処理システムの分析・設計の業務やコピーライターの業務など、特定の19種類の業務に限り認められる制度です。
「裁量労働制にも残業はある?メリットやデメリットなどを簡単に説明」

第20条(休日)

休日は、次のとおりとする。
① 土曜日及び日曜日
② 国民の祝日(日曜日と重なったときは翌日)
③ 年末年始(12月  日~1月  日)
④ 夏季休日(  月  日~  月  日)
⑤ その他会社が指定する日

2 業務の都合により会社が必要と認める場合は、あらかじめ前項の休日を他の日と振り替えることがある。

【解説】

テンプレートでは、上記以外に、1ヶ月間単位の変形労働時間制、1年単位の変形労働時間制の場合の休日の規定例があります。

変形労働時間制の休日については、各労働時間制の説明記事も参考にしてみてください。

第2項
この規定は、振替休日についての規定です。テンプレートにはありませんが、振替休日以外にも、代休の規定をすることもよくあります。

たまに、振替休日と代休の違いについてご質問を受けることがあるので、それについては、こちらの記事を参考にしてください。
「振替休日が週をまたぐとどうなるのか?振替休日と代休はなにが違うのか?」

振替休日と代休では、残業代(時間外割増賃金、休日割増賃金)の計算に違いがあります。

第21条(時間外及び休日労働等)

業務の都合により、第19条の所定労働時間を超え、又は第20条の所定休日に労働させることがある。

2 前項の場合、法定労働時間を超える労働又は法定休日における労働については、あらかじめ会社は労働者の過半数代表者と書面による労使協定を締結するとともに、これを所轄の労働基準監督署長に届け出るものとする。

3 妊娠中の女性、産後1年を経過しない女性労働者(以下「妊産婦」という)であって請求した者及び18歳未満の者については、第2項による時間外労働又は休日若しくは深夜(午後10時から午前5時まで)労働に従事させない。

4 災害その他避けることのできない事由によって臨時の必要がある場合には、第1項から前項までの制限を超えて、所定労働時間外又は休日に労働させることがある。ただし、この場合であっても、請求のあった妊産婦については、所定労働時間外労働又は休日労働に従事させない。

【解説】

第1項

残業や休日出勤についての規定です。

残業や休日出勤は、雇用関係があれば当然に指示命令できるというものではありませんので、このような規定が必要です。

第2項

従業員に残業や休日労働をさせる場合には、36協定を労働基準監督署に届け出ることが法律で定められています。

ただし、36協定の届け出が必要なのは、法定労働時間を超える残業や休日労働をさせる可能性がある場合に限ります。

労働基準監督署の調査があった場合は、必ず36協定の届け出の有無をチェックされます。
36協定については、こちらの記事を参考にしてください。
「36協定届の書き方や残業の上限時間は?新様式の記載例を見ながら解説」
第3項、第4項
法律上、このような制限がされています。ですので、就業規則への記載の有無にかかわらず、この規定の内容が適用されます。

第5章 休暇等

第22条(年次有給休暇)

採用日から6か月間継続勤務し、所定労働日の8割以上出勤した労働者に対しては、10日の年次有給休暇を与える。その後1年間継続勤務するごとに、当該1年間において所定労働日の8割以上出勤した労働者に対しては、下の表のとおり勤続期間に応じた日数の年次有給休暇を与える。

○勤続期間:付与日数
6か月:10日
1年6か月:11日
2年6か月:12日
3年6か月:14日
4年6か月:16日
5年6か月:18日
6年6か月以上:20日

2 前項の規定にかかわらず、週所定労働時間30時間未満であり、かつ、週所定労働日数が4日以下(週以外の期間によって所定労働日数を定める労働者については年間所定労働日数が216日以下)の労働者に対しては、下の表のとおり所定労働日数及び勤続期間に応じた日数の年次有給休暇を与える。

○週所定労働日数:1年間の所定労働日数
:勤続期間 → 年次有給休暇

4日:169日~216日
:6か月 → 7日
:1年6か月 → 8日
:2年6か月 → 9日

3日:121日~168日
:6か月 → 5日
:1年6か月 → 6日
:2年6か月 → 6日
:3年6か月 → 8日
:4年6か月 → 9日
:5年6か月 → 10日
:6年6か月以上 → 11日

2日:73日~120日
:6か月 → 3日
:1年6か月 → 4日
:2年6か月 → 4日
:3年6か月 → 5日
:4年6か月 → 6日
:5年6か月 → 6日
:6年6か月以上 → 7日

1日:48日~72日:6か月 → 1日
:1年6か月 → 2日
:2年6か月 → 2日
:3年6か月 → 2日
:4年6か月 → 3日
:5年6か月 → 3日
:6年6か月以上 → 3日

3 第1項又は第2項の年次有給休暇は、労働者があらかじめ請求する時季に取得させる。ただし、労働者が請求した時季に年次有給休暇を取得させることが事業の正常な運営を妨げる場合は、他の時季に取得させることがある。

4 前項の規定にかかわらず、労働者代表との書面による協定により、各労働者の有する年次有給休暇日数のうち5日を超える部分について、あらかじめ時季を指定して取得させることがある。

5 第1項又は第2項の年次有給休暇が10日以上与えられた労働者に対しては、第3項の規定にかかわらず、付与日から1年以内に、当該労働者の有する年次有給休暇日数のうち5日について、会社が労働者の意見を聴取し、その意見を尊重した上で、あらかじめ時季を指定して取得させる。ただし、労働者が第3項又は第4項の規定による年次有給休暇を取得した場合においては、当該取得した日数分を5日から控除するものとする。

6 第1項及び第2項の出勤率の算定に当たっては、下記の期間については出勤したものとして取り扱う。
(1)年次有給休暇を取得した期間
(2)産前産後の休業期間
(3)育児・介護休業法に基づく育児休業及び介護休業した期間
(4)業務上の負傷又は疾病により療養のために休業した期間

7 付与日から1年以内に取得しなかった年次有給休暇は、付与日から2年以内に限り繰り越して取得することができる。

8 前項について、繰り越された年次有給休暇とその後付与された年次有給休暇のいずれも取得できる場合には、繰り越された年次有給休暇から取得させる。

9 会社は、毎月の賃金計算締切日における年次有給休暇の残日数を、当該賃金の支払明細書に記載して各労働者に通知する。

【解説】

第1項

法律どおりの有給休暇の付与日数となっています。ごくまれに、独自の付与日数を設定している企業がありますが、法律を下回る付与日数は無効となり、法律上の付与日数が適用されるので、注意をしてください。

有給休暇の付与日は、原則は入社日が基準となりますので、個々の従業員により異なることになりますが、規定の仕方で、付与日を統一することも可能です。

有給休暇の基礎的な知識については、こちらの記事を参考にしてください。
「有給休暇の付与日数の計算やパートへの付与、付与日の統一は?【有給休暇の基礎】」

第2項

こちらも法律どおりの規定となっていますが、この就業規則を正社員のみに適用する場合は、該当する者がいないことになりますので、この規定は不要です。

第3項

従業員から請求があった有給休暇の取得日を、別の日に変更することを可能にする規定です。現実的には、取得日の変更は簡単にできるものではありません。

また、この規定では、有給休暇は「あらかじめ」請求するということになっていますが、これだと極端な話、始業時刻前に有給休暇を請求しても良いという解釈なってしまいます。

このような事態が起こらないようにするためにも、有給休暇のルールを社内で明確にし、就業規則に規定しておく必要があります。

そこで、第1項でご紹介した、「有給休暇の基礎的な知識」に関する記事や、こちらの有給休暇の規定例に関する記事も参考にしてみてください。
「有給休暇の一斉付与や義務化に関する規定例を具体的にご紹介!」

第4項

いわゆる「有給休暇の計画的付与」と呼ばれるものです。あらかじめ会社と従業員の間で、有給休暇の取得日を決めておく制度です。

つぎの第5項の有給休暇の取得義務化への対応策の一つとして、活用することができます。

計画的付与についても、第1項、第3項でご紹介してる記事を参考にしてみてください。

2019年4月から、10日以上の有給休暇が付与されている従業員には、1年間で最低5日は有給休暇を取得させてなければならないことになっています。(有給休暇の取得義務)

第5項では、そのことを規定しています。

有給休暇の取得義務化については、こちらの記事を参考にしてください。
「有給休暇取得の義務化で罰則も!中小零細企業はどう対応するのか?」

第6項、第7項
どちらも法律どおりの規定となっています。
第7項:有給休暇の繰り越しは翌年度までですので、有給休暇をまったく取得していない従業員の場合、勤続年数が7年半の時点で、40日の有給休暇が付与されていることになります。
(※取得の義務化により、理論上は、今後は最大でも35日になります。)
第8
この規定は、古い有給休暇(繰り越し分)と新しい有給休暇(本年付与分)のうち、古い有給休暇(繰り越し分)から消化していくという規定です。
この規定は従業員に有利な規定です。

古い方から消化することで、新しい方が消化できなかった場合、翌年度に繰り越すことができるからです。

法律上は、古い方と新しい方どちらから消化しても良いので、どのように取り扱うかは、会社が決めることができます

第9
この規定は、給与明細書に有給休暇の残日数を記載するという規定です。
法律上は記載義務はありません
もちろん記載した方が、従業員さんは自分の有給休暇の残日数を把握できますし、会社と従業員さんとの間で残日数に対するそごがなくなるので良いですが、実際に給与明細書に記載しないのであれば、この規定は不要です。

第23条(年次有給休暇の時間単位での付与)

労働者代表との書面による協定に基づき、前条の年次有給休暇の日数のうち、1年について5日の範囲で次により時間単位の年次有給休暇(以下「時間単位年休」という。)を付与する。

(1)時間単位年休付与の対象者は、すべての労働者とする。
(2)時間単位年休を取得する場合の、1日の年次有給休暇に相当する時間数は、以下のとおりとする。
① 所定労働時間が5時間を超え6時間以下の者…6時間
② 所定労働時間が6時間を超え7時間以下の者…7時間
③ 所定労働時間が7時間を超え8時間以下の者…8時間
(3)時間単位年休は1時間単位で付与する。
(4)本条の時間単位年休に支払われる賃金額は、所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金の1時間当たりの額に、取得した時間単位年休の時間数を乗じた額とする。
(5)上記以外の事項については、前条の年次有給休暇と同様とする。

【解説】

有給休暇を時間単位で取得させるかどうかは、任意となっています。時間単位での取得を認める場合は、労使協定が必要になります。

個人的には、有給休暇の日数管理が複雑になるので、あまりオススメはしていません。小さな会社には、テンプレートには記載がありませんが、半日単位での有給休暇の取得をオススメしています。

半日単位での取得であれば、労使協定を締結する必要がありませんし、有給休暇の日数管理もしやすいからです。

半日単位での取得については、22条でご案内している、「有給休暇の基礎に関する記事」に記載がありますので、参考にしてみてください。

半日単位、時間単位の取得、両方を規定することもできますので、従業員の意見も聞きながら、会社と従業員双方にとって良い方法を選択してください。

第24条(産前産後の休業)

6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内に出産予定の女性労働者から請求があったときは、休業させる。

2 産後8週間を経過していない女性労働者は、就業させない。

3 前項の規定にかかわらず、産後6週間を経過した女性労働者から請求があった場合は、その者について医師が支障ないと認めた業務に就かせることがある。

【解説】
産前産後休業は、法律で定められている休業ですが、産前産後休業期間中に給料を支給するか否かは、会社の自由です。
テンプレートには、給料の取り扱いに関する記載がありませんので、休業期間中の給料について記載するようにしましょう。(賃金規程で記載することもできます。)
ちなみに、小さな会社で有給にされているケースは、いままで見たことがありません。
なお、健康保険に加入している従業員(一定の条件あり)には、産前産後休業期間中に給料が受け取れなかった場合、「出産手当金」が支給されます。
出産手当金については、こちらの記事を参考にしてください。
「出産手当金と出産育児一時金の申請はいつする?計算の仕方なども解説」

第25条(母性健康管理の措置)

妊娠中又は出産後1年を経過しない女性労働者から、所定労働時間内に、母子保健法(昭和40年法律第141号)に基づく保健指導又は健康診査を受けるために申出があったときは、次の範囲で時間内通院を認める。
①産前の場合
妊娠23週まで・・・・・・・・4週に1回
妊娠24週から35週まで ・・・2週に1回
妊娠36週から出産まで ・・・・1週に1回
ただし、医師又は助産師(以下「医師等」という。)がこれと異なる指示をしたときには、その指示により必要な時間
②産後(1年以内)の場合
医師等の指示により必要な時間

2 妊娠中又は出産後1年を経過しない女性労働者から、保健指導又は健康診査に基づき勤務時間等について医師等の指導を受けた旨申出があった場合、次の措置を講ずる。
① 妊娠中の通勤緩和措置として、通勤時の混雑を避けるよう指導された場合は、原則として○時間の勤務時間の短縮又は○時間以内の時差出勤を認める。
② 妊娠中の休憩時間について指導された場合は、適宜休憩時間の延長や休憩の回数を増やす。
③ 妊娠中又は出産後の女性労働者が、その症状等に関して指導された場合は、医師等の指導事項を遵守するための作業の軽減や勤務時間の短縮、休業等の措置をとる。

【解説】
母性健康管理の措置は、法律で定められているものですが、この措置を利用した時間に給料を支給するか否かは、会社の自由です。

テンプレートには、給料の取り扱いに関する記載がありませんので、措置利用中の給料について記載するようにしましょう。(賃金規程で記載することもできます。)

ちなみに、小さな会社で有給にされているケースは、いままで見たことがありません。
前条の産前産後休業、本条の母性健康管理の措置、次条の生理休暇など、女性従業員に関する休業などの制度については、こちらの記事を参考にしてください。
「生理休暇や産前産後休業、育児時間など法律で定められた女性のための制度一覧」

第26条(育児時間及び生理休暇)

1歳に満たない子を養育する女性労働者から請求があったときは、休憩時間のほか1日について2回、1回について30分の育児時間を与える。

2 生理日の就業が著しく困難な女性労働者から請求があったときは、必要な期間休暇を与える。

【解説】
第1項
育児時間は、1日の所定労働時間が4時間以下の従業員に対しては、1日1回30分を与えれば良いことになっています。
第2項
生理休暇は、時間単位、半日単位で設定することもできます。
ただし、女性従業員が1日休ませて欲しいと言っているのに、半日しか休暇を与えないということはできません。
どちらの規定も法律で定められているものですが、どちらも給料を支給するかどうかは、会社の自由です。
テンプレートには、給料の取り扱いに関する記載がありませんので、給料について記載するようにしましょう。(賃金規程で記載することもできます。)
ちなみに、小さな会社で有給にされているケースは、いままで見たことがありません。

第27条(育児・介護休業、子の看護休暇等)

労働者のうち必要のある者は、育児・介護休業法に基づく育児休業、介護休業、子の看護休暇、介護休暇、育児・介護のための所定外労働、時間外労働及び深夜業の制限並びに所定労働時間の短縮措置等(以下「育児・介護休業等」という。)の適用を受けることができる。

2 育児・介護休業等の取扱いについては、「育児・介護休業等に関する規則」で定める。

【解説】
この条で規定してある、育児や介護に関する休業や労働時間の短縮など(「育児・介護休業等」)は、すべて育児・介護休業法に定められたものです。
一般的に、育児・介護休業等の詳細な規定については、第2項にあるように、別規則(別規程)として整備します。
第2項のように、別規則(別規程)に定めるとしながら、実際には別規則(別規程)がないことが意外とあります。
育児・介護休業等は、規定の仕方によって、利用できる従業員を限定することや、複数ある措置のなかで、会社としてどの措置を従業員に利用させるのかを選択できるケースがあります。
ですので、別規則(別規程)が存在しない場合は、全従業員が対象となり、すべての措置を従業員が選択できるという事態になりかねませんので、別規程(別規則)は、きちんと作成しておきましょう。

第28条(慶弔休暇)

労働者が申請した場合は、次のとおり慶弔休暇を与える。
① 本人が結婚したとき                         日
② 妻が出産したとき                          日
③ 配偶者、子又は父母が死亡したとき                  日
④ 兄弟姉妹、祖父母、配偶者の父母又は兄弟姉妹が死亡したとき      日

【解説】
慶弔休暇を導入するか否かは、会社の任意です。
小さな会社であっても、比較的導入されている企業さんが多いです。休暇日数は、まちまちです。
有給にするか無給にするかも任意ですが、私の知る限りでは、有給にされている企業さんの方が多いです。
上記に記載がある項目すべてを導入する必要はありませんし、別の休暇項目を追加することもできます。

第29条(病気休暇)

労働者が私的な負傷又は疾病のため療養する必要があり、その勤務しないことがやむを得ないと認められる場合に、病気休暇を○日与える。

【解説】
病気休暇を導入するか否かは、会社の任意です。
病気休暇を導入されている企業さんは、私の経験上はありません。
導入される場合は、有給か無給かを明示しておくほうが良いです。

第30条(裁判員等のための休暇)

労働者が裁判員若しくは補充裁判員となった場合又は裁判員候補者となった場合には、次のとおり休暇を与える。
① 裁判員又は補充裁判員となった場合  必要な日数
② 裁判員候補者となった場合      必要な時間

【解説】
法律で、従業員が裁判員等に選ばれた場合は、必要な時間を与えなければならないことになっています。
テンプレートには、休暇期間中の給料についての記載がありませんので、有給か無給かを明示しておきましょう。

第6章 賃金

このテンプレートでは、就業規則内で賃金の詳細を規定していますが、一般的には、就業規則内では詳細を規定せず、別途「賃金規程」を作成することが多いです。

就業規則のボリュームが増えすぎて見にくくなったり、賃金に関する規程を一部改定しただけで、就業規則全体の変更が必要になったりということが起こりうるからです。

規定例:
社員の賃金等に関しては、別に定める賃金規程による。

第31条(賃金の構成)

賃金の構成は、次のとおりとする。

【賃金】
基本給

手当
・ 家族手当
・ 通勤手当
・ 役付手当
・ 技能・資格手当
・ 精勤手当

割増賃金
・ 時間外労働割増賃金
・ 休日労働割増賃金
・ 深夜労働割増賃金

【解説】
実際に支給されている手当と、規定されている手当に相違がないように気をつけてください。
実際に、就業規則に規定されていない手当が支給されているケースや、逆にすでに廃止した手当が、規則には残ったままになっているということがあります。

第32条(基本給)

基本給は、本人の職務内容、技能、勤務成績、年齢等を考慮して各人別に決定する。

【解説】
基本給に関して、月給制と月給日給制の違いをお伝えしておきます。一般的に「月給制」と呼ばれているのは、実は「月給日給制」のことを指しているケースがほとんどです。
月給制は、欠勤や遅刻早退などがあっても、給与を減額することなく支給する制度です。(ですので、完全月給制という言い方もします。)
一方で月給日給制は、欠勤や遅刻早退などがあった場合は、その分の給与を差し引いて支給する制度です。
おそらく、ほとんどの小さな会社では、「月給制」ではなく、「月給日給制」を採用しているはずです。
第33条以降は、手当についての規定となります。
2021年4月からは、中小企業にも「同一労働同一賃金」が適用されることになりますので、手当の「目的や意味」が非常に重要になります。
なぜ、「なんのためにこの手当を支給しているのか?」「なぜ、この手当は正社員だけに支給しているのか?」など、あらためて一つの一つの手当について、しっかりと確認をしてください。

第33条(家族手当)

家族手当は、次の家族を扶養している労働者に対し支給する。
① 18歳未満の子
1人につき  月額 円
② 65歳以上の父母
1人につき  月額 円

【解説】
家族手当は、原則として、割増賃金(残業代、休日割増手当)の計算の基礎から除外できる手当ですが、支給の仕方によっては除外対象となりませんので、注意してください。
詳細はこちらの記事を参考にしてください。

第34条(通勤手当)

通勤手当は、月額 円までの範囲内において、通勤に要する実費に相当する額を支給する。

【解説】
通勤手当も原則として、割増賃金(残業代、休日割増手当)の計算の基礎から除外できる手当です。
通勤手当に上限額を設ける場合、所得税法上の非課税の範囲内を上限とする方法などがあります。
転居などで通勤経路が変更になった場合、速やかに届け出を行なうことをうながす規定、通勤手当を不正に受け取った場合は、差額を返還させる規定もあった方が良いでしょう。

第35条(役付手当)

役付手当は、以下の職位にある者に対し支給する。
部長  月額    円
課長  月額    円
係長  月額    円

2 昇格によるときは、発令日の属する賃金月から支給する。この場合、当該賃金月においてそれまで属していた役付手当は支給しない。

3 降格によるときは、発令日の属する賃金月の次の賃金月から支給する。

【解説】
役付手当(役職手当)が支給されている人に、割増賃金(残業代、休日割増手当)を支給していないケースを目にしますが、基本的に役職者であっても、割増賃金の支給は必要です。
法律上、「管理監督者」に該当する場合は、残業代などの支給は不要となっていますが、小さな会社で「管理監督者」に該当する人は、ほとんどいないと考えた方が良いです。
また、役付手当を割増賃金の計算に含めていないケースも目にしますが、役付手当は、割増賃金の計算から除外することはできません

第36条(技能・資格手当)

技能・資格手当は、次の資格を持ち、その職務に就く者に対し支給する。

安全・衛生管理者:月額  円
(安全衛生推進者を含む。)

食品衛生責任者:月額   円

調理師 :月額  円

栄養士:月額  円

【解説】
資格手当にかかわらず、どのような手当を支給するかは、会社の自由ですが、割増賃金の計算から除外することはできませんので、注意してください。

第37条(精勤手当)

精勤手当は、当該賃金計算期間における出勤成績により、次のとおり支給する。
① 無欠勤の場合:月額  円
② 欠勤1日以内の場合:月額  円

2 前項の精勤手当の計算においては、次のいずれかに該当するときは出勤したものとみなす。
① 年次有給休暇を取得したとき
② 業務上の負傷又は疾病により療養のため休業したとき

3 第1項の精勤手当の計算に当たっては、遅刻又は早退 回をもって、欠勤1日とみなす。

【解説】
精勤手当(精皆勤手当)が、割増賃金の計算から除外されているのをよく見ます。割増賃金の計算からは、除外できません
精勤手当は、同一労働同一賃金の観点から、正社員だけに支給するというのは難しくなりますので、注意してください。

第38条(割増賃金)

時間外労働に対する割増賃金は、次の割増賃金率に基づき、次項の計算方法により支給する。
(1) 1か月の時間外労働の時間数に応じた割増賃金率は、次のとおりとする。この場合の1か月は毎月○日を起算日とする。
① 時間外労働45時間以下・・・25%
② 時間外労働45時間超~60時間以下・・35%
③ 時間外労働60時間超・・・・・50%
④ ③の時間外労働のうち代替休暇を取得した時間・・・35%(残り15%の割増賃金は代替休暇に充当する。)

(2)1年間の時間外労働の時間数が360時間を超えた部分については、40%とする。この場合の1年は毎年  月  日を起算日とする。

(3)時間外労働に対する割増賃金の計算において、上記(1)及び(2)のいずれにも該当する時間外労働の時間数については、いずれか高い率で計算することとする。

2 割増賃金は、次の算式により計算して支給する。
(1)月給制の場合
① 時間外労働の割増賃金
○時間外労働が1か月45時間以下の部分
(基本給+役付手当+技能・資格手当+精勤手当)/1か月の平均所定労働時間数×1.25×時間外労働の時間数

○時間外労働が1か月45時間超~60時間以下の部分
(基本給+役付手当+技能・資格手当+精勤手当)/1か月の平均所定労働時間数×1.35×時間外労働の時間数

○時間外労働が1か月60時間を超える部分
(基本給+役付手当+技能・資格手当+精勤手当)/1か月の平均所定労働時間数×1.50×時間外労働の時間数

○時間外労働が1年360時間を超える部分)
(基本給+役付手当+技能・資格手当+精勤手当)/1か月の平均所定労働時間数×1.40×時間外労働の時間数

② 休日労働の割増賃金(法定休日に労働させた場合)
(基本給+役付手当+技能・資格手当+精勤手当)1か月の平均所定労働時間数×1.35×休日労働の時間数

③ 深夜労働の割増賃金(午後10時から午前5時までの間に労働させた場合)
(基本給+役付手当+技能・資格手当+精勤手当)/1か月の平均所定労働時間数×0.25×深夜労働の時間数

(2)日給制の場合
① 時間外労働の割増賃金
○時間外労働が1か月45時間以下の部分
【(日給/1日の所定労働時間数)+(役付手当+技能・資格手当+精勤手当)/1か月の平均所定労働時間数】 × 1.25 × 時間外労働の時間数

○時間外労働が1か月45時間超~60時間以下の部分
【(日給/1日の所定労働時間数)+(役付手当+技能・資格手当+精勤手当)/1か月の平均所定労働時間数】 × 1.35 × 時間外労働の時間数

○時間外労働が1か月60時間を超える部分
【(日給/1日の所定労働時間数)+(役付手当+技能・資格手当+精勤手当)/1か月の平均所定労働時間数】 × 1.50 × 時間外労働の時間数

○時間外労働が1年360時間を超える部分
【(日給/1日の所定労働時間数)+(役付手当+技能・資格手当+精勤手当)/1か月の平均所定労働時間数】 × 1.40 × 時間外労働の時間数

② 休日労働の割増賃金
【(日給/1日の所定労働時間数)+(役付手当+技能・資格手当+精勤手当)/1か月の平均所定労働時間数】 × 1.35 × 休日労働の時間数

③ 深夜労働の割増賃金
【(日給/1日の所定労働時間数)+(役付手当+技能・資格手当+精勤手当)/1か月の平均所定労働時間数】 × 0.25 × 深夜労働の時間数

(3)時間給制の場合
① 時間外労働の割増賃金
○時間外労働が1か月45時間以下の部分
【時間給+(役付手当+技能・資格手当+精勤手当)/1か月の平均所定労働時間数】 × 1.25 × 時間外労働の時間数

○時間外労働が1か月45時間超~60時間以下の部分
【時間給+(役付手当+技能・資格手当+精勤手当)/1か月の平均所定労働時間数】 × 1.35 × 時間外労働の時間数

○時間外労働が1か月60時間を超える部分
【時間給+(役付手当+技能・資格手当+精勤手当)/1か月の平均所定労働時間数】 × 1.50 × 時間外労働の時間数

○時間外労働が1年360時間を超える部分
【時間給+(役付手当+技能・資格手当+精勤手当)/1か月の平均所定労働時間数】 × 1.40 × 時間外労働の時間数

② 休日労働の割増賃金
【時間給+(役付手当+技能・資格手当+精勤手当)/1か月の平均所定労働時間数】 × 1.35 × 休日労働の時間数

③ 深夜労働の割増賃金
【時間給+(役付手当+技能・資格手当+精勤手当)/1か月の平均所定労働時間数】 × 0.25 × 深夜労働の時間数

3 前項の1か月の平均所定労働時間数は、次の算式により計算する。
【(365-年間所定休日日数)×1日の所定労働時間】/12

【解説】
第1項
時間外労働(いわゆる「残業」)をした場合の割増率についての規定です。
このテンプレートでは、月間の時間外労働時間数によって割増率を変えていますが、法律では、月間の労働時間数が、60時間以内の場合:2割5分、60時間超の場合:5割(60時間を超過した時間数のみ)と定められています。
さらに、60時間超の5割については、2020年11月現在、大企業のみが対象となっており、中小企業は、2割5分で良いことになっています。(中小企業は、2023年4月1日から適用予定です。)
つまり、このテンプレートどおり規定してしまうと、法律で定められている以上の割増賃金を支払わなければならなくってしまいますので、注意が必要です。
また、第2号の規定についても、法律上はこのような義務はありませんので、削除を忘れないようにしましょう。
第2項
時間外労働の割増賃金の計算方法ですが、中小企業の場合は、現在のところ割増率2割5分以外の計算は不要です。
②(休日労働)、③(深夜労働)の割増率は法律どおりに規定されています。
第2号(日給制の場合)、第3号(時間給制の場合)も同様です。
なお、テンプレートでは、時間外割増率を1.25としていますが、厳密には、1(時間給分)と0.25(割増率)に区分されます
この考え方は、振替休日や代休を取得した場合の割増賃金の計算などに役立ちますので、こちらの記事を参照してみてください。

第39条(1年単位の変形労働時間制に関する賃金の精算)

1年単位の変形労働時間制の規定(第19条及び第20条)により労働させた期間が当該対象期間より短い労働者に対しては、その労働者が労働した期間を平均し1週間当たり40時間を超えて労働させた時間(前条の規定による割増賃金を支払った時間を除く。)については、前条の時間外労働についての割増賃金の算式中の割増率を0.25として計算した割増賃金を支払う。

【解説】
1年単位の変形労働時間制を採用している場合の、割増賃金の計算についての規定です。1年単位の変形労働時間制での時間外割増賃金の計算は、独特の部分があるので注意が必要です。
詳細はこちらの記事を参考にしてください。

第40条(代替休暇)

1か月の時間外労働が60時間を超えた労働者に対して、労使協定に基づき、次により代替休暇を与えるものとする。

2 代替休暇を取得できる期間は、直前の賃金締切日の翌日から起算して、翌々月の賃金締切日までの2か月とする。

3 代替休暇は、半日又は1日で与える。この場合の半日とは、
午前(   :   ~   :   )又は午後(   :   ~   :   )のことをいう。

4 代替休暇の時間数は、1か月60時間を超える時間外労働時間数に換算率を乗じた時間数とする。この場合において、換算率とは、代替休暇を取得しなかった場合に支払う割増賃金率50%から代替休暇を取得した場合に支払う割増賃金率35%を差し引いた15%とする。また、労働者が代替休暇を取得した場合は、取得した時間数を換算率(15%)で除した時間数については、15%の割増賃金の支払を要しないこととする。

5 代替休暇の時間数が半日又は1日に満たない端数がある場合には、その満たない部分についても有給の休暇とし、半日又は1日の休暇として与えることができる。ただし、前項の割増賃金の支払を要しないこととなる時間の計算においては、代替休暇の時間数を上回って休暇とした部分は算定せず、代替休暇の時間数のみで計算することとする。

6 代替休暇を取得しようとする者は、1か月に60時間を超える時間外労働を行った月の賃金締切日の翌日から5 日以内に、会社に申し出ることとする。代替休暇取得日は、労働者の意向を踏まえ決定することとする。

7 会社は、前項の申出があった場合には、支払うべき割増賃金額のうち代替休暇に代替される割増賃金額を除いた部分を通常の賃金支払日に支払うこととする。ただし、当該月の末日の翌日から2 か月以内に取得がなされなかった場合には、取得がなされないことが確定した月に係る賃金支払日に残りの15%の割増賃金を支払うこととする。

8 会社は、第6項に定める期間内に申出がなかった場合は、当該月に行われた時間外労働に係る割増賃金の総額を通常の賃金支払日に支払うこととする。ただし、第6項に定める期間内に申出を行わなかった労働者から、第2項に定める代替休暇を取得できる期間内に改めて代替休暇の取得の申出があった場合には、会社の承認により、代替休暇を与えることができる。この場合、代替休暇の取得があった月に係る賃金支払日に過払分の賃金を精算するものとする。

【解説】
この規定は、時間外労働が、60時間を超えた従業員に対して、5割増しの割増賃金を支払う代わりに、有給の休暇を与えることができるようにしたものです。
労働者の健康保持の観点から、法律で認められた措置です。
中小企業に関係してくるのは、2023年4月1日からですので、現時点では削除しておく規定となります。

第41条(休暇等の賃金)

年次有給休暇の期間は、所定労働時間労働したときに支払われる通常の賃金を支払う。

2 産前産後の休業期間、育児時間、生理休暇、母性健康管理のための休暇、育児・介護休業法に基づく育児休業期間、介護休業期間、子の看護休暇期間及び介護休暇期間、裁判員等のための休暇の期間は、無給 / 通常の賃金を支払うこと とする。

3 第9条に定める休職期間中は、原則として賃金を支給しない(  か月までは  割を支給する)。

【解説】
各休暇などでご説明しましたが、このテンプレートでは、休暇中の給与の有無を賃金に関する規定内で、まとめて行っています。
個人的には、各休暇などの条文で来てしておく方が、わかりやすいですし、規定漏れもないのでは?と考えますが、このような規定の仕方もあります。

第42条(臨時休業の賃金)

会社側の都合により、所定労働日に労働者を休業させた場合は、休業1日につき労基法第12条に規定する平均賃金の6割を支給する。この場合において、1日のうちの一部を休業させた場合にあっては、その日の賃金については労基法第26条に定めるところにより、平均賃金の6割に相当する賃金を保障する。

【解説】
コロナ禍で多くの企業が、従業員を休業させざるを得ない状況となりましたが、その場合の給与の保障についての規定がこれです。
平均賃金については、こちらの記事を参考にしてください。
「平均賃金の計算方法、休業手当で使う平均賃金とは?【計算シート紹介】」
ややこしい話になりますが、休業の場合に、平均賃金の6割以上保障すれば「OKですよ。」と規定しているのは、労働基準法です。
ところが、民法ではそのような規定はなく、従業員は給与の全額支払いを求めることができます。実際に裁判所もそのような判断をし、企業に全額支払いを命じています。
そこで、「会社は民法(第536条第2項)の適用を排除し、賃金を支給しない。」という規定を入れることで、そのリスクを軽減することが可能ですので、検討をしてみてください。

第43条(欠勤等の扱い)

欠勤、遅刻、早退及び私用外出については、基本給から当該日数又は時間分の賃金を控除する。

2 前項の場合、控除すべき賃金の1時間あたりの金額の計算は以下のとおりとする。
(1)月給の場合
基本給÷1か月平均所定労働時間数
(1か月平均所定労働時間数は第36条第3項の算式により計算する。)
(2)日給の場合
基本給÷1日の所定労働時間数

【解説】
たまに、1日欠勤したら1万円といった控除の仕方をされている企業さんを見ますが、そのような一律での控除は、控除のしすぎになるおそれがあります。
このテンプレートでは、控除の対象が基本給だけになっていますが、他の手当も控除の対象とすることが可能ですので、自社で検討をしてみてください。

第44条(賃金の計算期間及び支払日)

賃金は、毎月  日に締め切って計算し、翌月  日に支払う。ただし、支払日が休日に当たる場合は、その前日に繰り上げて支払う。

2 前項の計算期間の中途で採用された労働者又は退職した労働者については、月額の賃金は当該計算期間の所定労働日数を基準に日割計算して支払う。

【解説】
給与締日と給与支払日を定める規定です。

第45条(賃金の計算期間及び支払日)

賃金は、労働者に対し、通貨で直接その全額を支払う。

2 前項について、労働者が同意した場合は、労働者本人の指定する金融機関の預貯金口座又は証券総合口座へ振込により賃金を支払う。

3 次に掲げるものは、賃金から控除する。
① 源泉所得税
② 住民税
③ 健康保険、厚生年金保険及び雇用保険の保険料の被保険者負担分
④ 労働者代表との書面による協定により賃金から控除することとした社宅入居料、財形貯蓄の積立金及び組合費

【解説】
第1項、第2項
いまだに給与は現金直接払いが原則です。口座振り込みは、従業員の同意を得たうえで行なう必要があります。
第3項
給与から天引きできるものは、税金(所得税、住民税)、公的保険料(雇用保険、健康保険、介護保険、厚生年金)と法律で決まっています。
その他のものを天引きする場合は、労使協定が必要となります。
貸付金などを給与から天引きされていることがありますが、労使協定がない場合は違法ですので、注意してください。

第46条(賃金の非常時払い)

労働者又はその収入によって生計を維持する者が、次のいずれかの場合に該当し、そのために労働者から請求があったときは、賃金支払日前であっても、既往の労働に対する賃金を支払う。
① やむを得ない事由によって1週間以上帰郷する場合
② 結婚又は死亡の場合
③ 出産、疾病又は災害の場合
④ 退職又は解雇により離職した場合

【解説】
この規定は、法律でさだめられたものです。あらためて、就業規則(賃金規程)に規定しないこともあります。
退職した従業員から、すぐに給与を支払って欲しいという請求されることがあります。この場合、支給日まで待ってくれということはできませんので、注意してください。
一方で、請求があってから何日以内に支払わなければならいという決まりはありませんので、可能な限り速やかに支払うということになります。

第47条(昇給)

昇給は、勤務成績その他が良好な労働者について、毎年  月  日をもって行うものとする。ただし、会社の業績の著しい低下その他やむを得ない事由がある場合は、行わないことがある。

2 顕著な業績が認められた労働者については、前項の規定にかかわらず昇給を行うことがある。

3 昇給額は、労働者の勤務成績等を考慮して各人ごとに決定する。

【解説】
昇給に関する事項は必ず記載することが、法律で定められています。
テンプレートでは、法律に規定されている昇給に関することしか記載がありませんが、現実的には、昇給だけでなく、降給の可能性もゼロではないはずです。
そこで、本条を「昇給」とするのではなく、「給与の見直し」や「給与改定」とし、降給についても規定しておくことをおすすめします。

第48条(賞与)

賞与は、原則として、下記の算定対象期間に在籍した労働者に対し、会社の業績等を勘案して下記の支給日に支給する。ただし、会社の業績の著しい低下その他やむを得ない事由により、支給時期を延期し、又は支給しないことがある。

・算定対象期間
①: 月 日から 月 日まで
②: 月 日から 月 日まで
・支給日
①: 月 日
②: 月 日

2 前項の賞与の額は、会社の業績及び労働者の勤務成績などを考慮して各人ごとに決定する。

【解説】
賞与は必ずしも支給しなければいけないものではありませんが、支給する場合には、支給対象時期や賞与の算定基準、支払方法などを明確にしておく必要があります。
第1項
「算定対象期間に在籍した労働者に対し」賞与を支給する規定になっています。この規定の仕方の場合、賞与の支給日に在籍をしていなくても、賞与を支給することになってしまいます。
このようなことを避けるため、賞与は、「(算定対象期間にすべてに在籍し、)かつ支給日に在籍している従業員に支給する」とします。
※カッコ書きについては、規定するかしないかを検討する余地があります。対象期間のすべてではなく、○ヶ月間などとすることも会社の自由です。
支給日については、日にちを規定せず、支給月だけを規定することもあります。

第7章 定年、退職及び解雇

第49条(定年等)

[例1]定年を満65歳とする例
労働者の定年は、満65歳とし、定年に達した日の属する月の末日をもって退職とする。

[例2]定年を満60歳とし、その後希望者を継続雇用する例
労働者の定年は、満60歳とし、定年に達した日の属する月の末日をもって退職とする。

2 前項の規定にかかわらず、定年後も引き続き雇用されることを希望し、解雇事由又は退職事由に該当しない労働者については、満65歳までこれを継続雇用する。

【解説】
2020年11月現在、原則65歳までの雇用が義務づけられています。
[例1]は、65歳を定年として、原則、労働条件などを変えることなく雇用し続ける規定です。
[例2]は、60歳で一度定年退職とした後に、労働条件などを見直し再雇用する規定です。
今のところ、こちらを選択される企業の方が多いです。
定年年齢を60歳未満にすることはできません。
ちなみに、テンプレートでは、定年に達した月の月末で退職となっていますが、別の定め方をすることも可能です。
例:
・満65歳(60歳)の誕生日(法律上は前日でも可)
・満65歳(60歳)の誕生日の属する月の年度末
・満65歳(60歳)の誕生日直後の賃金締切日個人的には、賃金締切日にすると給与計算が簡単なので、おすすめしています。

第50条(退職)

前条に定めるもののほか、労働者が次のいずれかに該当するときは、退職とする。
① 退職を願い出て会社が承認したとき、又は退職願を提出して○日を経過したとき
② 期間を定めて雇用されている場合、その期間を満了したとき
③ 第9条に定める休職期間が満了し、なお休職事由が消滅しないとき
④ 死亡したとき

2 労働者が退職し、又は解雇された場合、その請求に基づき、使用期間、業務の種類、地位、賃金又は退職の事由を記載した証明書を遅滞なく交付する。

【解説】
第1項第1号
退職の申し出をいつまでにすべきかを規定しておく必要があります。
例えば、「退職希望日の30日以上前に申し出ること」など。
また、民法で、退職の申出をした日から起算して14日を経過したときは、退職となると規定がされています。この場合、会社の承認は必要ありません。
なお、厚生労働省のテンプレートの解説では、「月給者の場合、月末に退職を希望するときは当月の前半に、また、賃金締切日が20日でその日に退職したいときは20日以前1か月間の前半に退職の申出をする必要があります。」と記載されていますが、これは民法が改正される前の規定です。
現在、この規定は民法から削除されています。
第1項第2号
この就業規則が正社員のみに適用される場合は、対象者がいないので、この規定は削除します。
テンプレートには記載がありませんが、つぎの3つは規定をしておく方が良いです。
1.従業員が行方不明になった場合の規定
2.退職日前の業務の引き継ぎに関する規定
3.貸与品の返却などに関する規定
1.従業員が行方不明になった場合の規定
行方不明になった場合に、解雇扱いとする規定をみることがありますが、行方不明不明者の解雇手続きは手間がかかるので、極力避けるべきです。
そこで、行方不明になった場合は、解雇ではなく当然退職として取り扱う旨の規定をしておきます。

規定例:「会社に連絡がなく30日が経過してもなお、所在不明のとき」
2.退職日前の業務の引き継ぎに関する規定
退職を申し出た従業員が、退職日までに残っている有給休暇を消化し、引き継ぎなどをまともに行わずに、退職してしまうことがあります。
そのような事態を防ぐために、以下のような規定をしておく方が良いです。

規定例1:「退職の日までの間に従前の職務について後任者への引継ぎを完了すると共に、業務に支障をきたさないようにしなければならない。」

規定例2:「退職の日までは、会社から業務上等の指示がある場合は、その指示に従わなければならない。」

規定例:3「退職日よりさかのぼって○日は現実に就労しなければならない。」
上記の規定に違反した場合として:
「規定に違反した場合は、退職金の全部または一部を支給しないことがある。」
3.貸与品の返却などに関する規定
規定例:
退職することが決定した従業員は、会社が指定する日までに、会社により貸与された物品およびデータファイル、ソフトウェア、ハードディスク等の全てを返却し、会社に対して債務のある場合はその債務を完済しなければならない。

第51条(解雇)

労働者が次のいずれかに該当するときは、解雇することがある。
① 日々雇い入れられる労働者(ただし、1か月を超えて引き続き使用されるに至った者を除く。)勤務状況が著しく不良で、改善の見込みがなく、労働者としての職責を果たし得ないとき。
② 2か月以内の期間を定めて使用する労働者(ただし、その期間を超えて引き続き使用されるに至った者を除く。)勤務成績又は業務能率が著しく不良で、向上の見込みがなく、他の職務にも転換できない等就業に適さないとき。
③ 試用期間中の労働者(ただし、14日を超えて引き続き使用されるに至った者を除く。)業務上の負傷又は疾病による療養の開始後3年を経過しても当該負傷又は疾病が治らない場合であって、労働者が傷病補償年金を受けているとき又は受けることとなったとき(会社が打ち切り補償を支払ったときを含む。)。
④ 精神又は身体の障害により業務に耐えられないとき。
⑤ 試用期間における作業能率又は勤務態度が著しく不良で、労働者として不適格であると認められたとき。
⑥ 第66条第2項に定める懲戒解雇事由に該当する事実が認められたとき。
⑦ 事業の運営上又は天災事変その他これに準ずるやむを得ない事由により、事業の縮小又は部門の閉鎖等を行う必要が生じ、かつ他の職務への転換が困難なとき。
⑧ その他前各号に準ずるやむを得ない事由があったとき。

2 前項の規定により労働者を解雇する場合は、少なくとも30日前に予告をする。予告しないときは、平均賃金の30日分以上の手当を解雇予告手当として支払う。ただし、予告の日数については、解雇予告手当を支払った日数だけ短縮することができる。

3 前項の規定は、労働基準監督署長の認定を受けて労働者を第65条第1項第4号に定める懲戒解雇にする場合又は次の各号のいずれかに該当する労働者を解雇する場合は適用しない。
① 日々雇い入れられる労働者(ただし、1か月を超えて引き続き使用されるに至った者を除く。)勤務状況が著しく不良で、改善の見込みがなく、労働者としての職責を果たし得ないとき。日々雇い入れられる労働者(ただし、1か月を超えて引き続き使用されるに至った者を除く。)
② 2か月以内の期間を定めて使用する労働者(ただし、その期間を超えて引き続き使用されるに至った者を除く。)勤務成績又は業務能率が著しく不良で、向上の見込みがなく、他の職務にも転換できない等就業に適さないとき。2か月以内の期間を定めて使用する労働者(ただし、その期間を超えて引き続き使用されるに至った者を除く。)
③ 試用期間中の労働者(ただし、14日を超えて引き続き使用されるに至った者を除く。)業務上の負傷又は疾病による療養の開始後3年を経過しても当該負傷又は疾病試用期間中の労働者(ただし、14日を超えて引き続き使用されるに至った者を除く。)

4 第1項の規定による労働者の解雇に際して労働者から請求のあった場合は、解雇の理由を記載した証明書を交付する。

【解説】
第1項
①と②は、この就業規則を正社員のみに適用する場合は、対象者がいないので削除します。
第3項
「労働基準監督署長の認定を受けて」は削除する方が良いです。
これは、解雇予告の除外認定を受けることを意味していますが、懲戒解雇の効力の有無に、除外認定は関係ありません。
にもかかわらず、この規定があると、解雇予告除外認定をうけないまま懲戒解雇を行った場合、就業規則に規定されている手続きを踏まなかったとして、解雇が無効となる可能性があります。
もちろん、解雇予告除外認定を受けなければ、労働基準法違反にはなりますが、実際に懲戒解雇事由に該当する事実があれば、罰則を受ける可能性は低いと考えられます。
①と②は、第1項と同様です。
解雇についての詳細はこちらの記事を参考にしてください。

第8章 退職金

第52条(退職金の支給)

勤続○年以上の労働者が退職し又は解雇されたときは、この章に定めるところにより退職金を支給する。ただし、自己都合による退職者で、勤続○年未満の者には退職金を支給しない。また、第65条第2項により懲戒解雇された者には、退職金の全部又は一部を支給しないことがある。

2 継続雇用制度の対象者については、定年時に退職金を支給することとし、その後の再雇用については退職金を支給しない。

第53条(退職金の額)

退職金の額は、退職又は解雇の時の基本給の額に、勤続年数に応じて定めた下表の支給率を乗じた金額とする。

勤続年数  支給率
5年未満        1.0
5年~10年      3.0
11年~15年    5.0
16年~20年    7.0
21年~25年  10.0
26年~30年  15.0
31年~35年  17.0
36年~40年  20.0
41年~       25.0

2 第9条により休職する期間については、会社の都合による場合を除き、前項の勤続年数に算入しない。

第54条(退職金の支払方法及び支払時期)

退職金は、支給事由の生じた日から○か月以内に、退職した労働者(死亡による退職の場合はその遺族)に対して支払う。

【解説】
退職金の支給は、法律上義務づけられたものではなく、支給の有無は、会社の任意となります。一般的には、退職金の詳細については、別途「退職金規程」で規定するケースが多いです。

第9章 無期労働契約への転換

第55条(無期労働契約への転換)

期間の定めのある労働契約(有期労働契約)で雇用する従業員のうち、通算契約期間が5年を超える従業員は、別に定める様式で申込むことにより、現在締結している有期労働契約の契約期間の末日の翌日から、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)での雇用に転換することができる。

2 前項の通算契約期間は、平成25年4月1日以降に開始する有期労働契約の契約期間を通算するものとする。ただし、契約期間満了に伴う退職等により、労働契約が締結されていない期間が連続して6ヶ月以上ある従業員については、それ以前の契約期間は通算契約期間に含めない。

3 この規則に定める労働条件は、第1項の規定により無期労働契約での雇用に転換した後も引き続き適用する。ただし、無期労働契約へ転換した時の年齢が、第49条に規定する定年年齢を超えていた場合は、当該従業員に係る定年は、満○歳とし、定年に達した日の属する月の末日をもって退職とする。

【解説】
いわゆる「無期転換ルール」関する規定です。
有期労働契約で雇用している従業員の契約期間が、通算5年を超えた場合、その従業員が申し出ることで、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)での雇用に転換することができる制度です。
この就業規則を正社員にのみ適用する場合は、この条文は削除し、パートタイマー就業規則などに規定することとなります。

第10章 安全衛生及び災害補償

第56条(遵守事項)

会社は、労働者の安全衛生の確保及び改善を図り、快適な職場の形成のために必要な措置を講ずる。

2 労働者は、安全衛生に関する法令及び会社の指示を守り、会社と協力して労働災害の防止に努めなければならない。

3 労働者は安全衛生の確保のため、特に下記の事項を遵守しなければならない。
① 機械設備、工具等の就業前点検を徹底すること。また、異常を認めたときは、速やかに会社に報告し、指示に従うこと。
② 安全装置を取り外したり、その効力を失わせるようなことはしないこと。
③ 保護具の着用が必要な作業については、必ず着用すること。
④ 20歳未満の者は、喫煙可能な場所には立ち入らないこと。
⑤ 受動喫煙を望まない者を喫煙可能な場所に連れて行かないこと。
⑥ 立入禁止又は通行禁止区域には立ち入らないこと。
⑦ 常に整理整頓に努め、通路、避難口又は消火設備のある所に物品を置かないこと。
⑧ 火災等非常災害の発生を発見したときは、直ちに臨機の措置をとり、〇〇に報告し、その指示に従うこと。

【解説】
第3項
労働災害の防止や従業員の健康維持・向上のために、気をつけてほしいこと、実践してほしいことなどを規定します。
業種・職種によっては、テンプレート以外に注意事項などを追加します。
また、最後に包括的な規定をしておくと良いでしょう。
規定例:「前各号のほか、安全衛生上必要として会社が定めた事項に従うこと」

第57条(健康診断)

労働者に対しては、採用の際及び毎年1回(深夜労働に従事する者は6か月ごとに1回)、定期に健康診断を行う。

2 前項の健康診断のほか、法令で定められた有害業務に従事する労働者に対しては、特別の項目についての健康診断を行う。

3 第1項及び前項の健康診断の結果必要と認めるときは、一定期間の就業禁止、労働時間の短縮、配置転換その他健康保持上必要な措置を命ずることがある。

【解説】
第1項

定期健康診断の実施は、法律で義務づけられています。

法律で定期健康診断の対象となるのは、正社員だけでなく、パートタイマーなどであっても、1年以上継続勤務し、かつ1週間の所定労働時間が、正社員の所定労働時間数の4分の3以上の従業員です。

社会保険の加入対象者とほぼ同じと考えて良いです。
なお、新規採用者が、採用前3か月以内に健康診断を受診していて、その診断結果の証明書類を提出した場合は、採用時の健康診断を省略することができます。
ただし、法律で定められている診断項目を受診していない場合は、その項目については、健康診断を実施する必要があります。

第58条(長時間労働者に対する面接指導)

会社は、労働者の労働時間の状況を把握する。

2 長時間の労働により疲労の蓄積が認められる労働者に対し、その者の申出により医師による面接指導を行う。

3 前項の面接指導の結果必要と認めるときは、一定期間の就業禁止、労働時間の短縮、配置転換その他健康保持上必要な措置を命ずることがある。

【解説】
従業員の健康保持のためを考えるとテンプレートの規定でも良いのですが、法律で面接指導が義務となる条件が規定されています。
(1)休憩時間を除いて、1週間当たり40時間を超えて労働した時間が、1か月当たり80時間を超えたこと
(2)疲労の蓄積が認められる労働者であること
(3)該当する労働者からの申し出があること
この3つの条件すべてに当てはまった場合、会社が費用負担をして、医師による面接指導を受けさせなければなりません。
ですので、この条件を満たす場合のみ、面接指導を行うと規定することも可能です。

第59条(ストレスチェック)

労働者に対しては、毎年1回、定期に、医師、保健師等による心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)を行う。

2 前項のストレスチェックの結果、ストレスが高く、面接指導が必要であると医師、保健師等が認めた労働者に対し、その者の申出により医師による面接指導を行う。

3 前項の面接指導の結果必要と認めるときは、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等、必要な措置を命ずることがある。

【解説】
ストレスチェックを実施することが義務づけられているのは、常時50人以上の従業員を雇用する事業場に限られます。
ですので、50人未満の事業場でストレスチェックを実施しない場合は、この規定を削除する必要があります。
50人のカウントには、パートやアルバイトも含みます
事業場とは、会社全体ではなく、本社(本店)、支社(支店)単位のことを意味します。
ですので、会社全体で50人従業員がいたとしても、本社に30人、支店に20人であれば、事業場としては、50人未満ということになります。

第60条(健康管理上の個人情報の取扱い)

事業者は労働者の心身の状態に関する情報を適正に取り扱う。

【解説】
法律で、従業員の心身の状態に関する情報を収集・保管、使用するに当たっては、労働者の健康の確保に必要な範囲内でと定められています。
あらためて、就業規則に規定はしなくとも良いかもしれません。

第61条(安全衛生教育)

労働者に対し、雇入れの際及び配置換え等により作業内容を変更した場合、その従事する業務に必要な安全及び衛生に関する教育を行う。

2 労働者は、安全衛生教育を受けた事項を遵守しなければならない。

【解説】
法律に規定されていることではありますが、それ以上に、実務上必然的に行うことですので、労使双方確認のための規定と言えます。

第62条(災害補償)

労働者が業務上の事由又は通勤により負傷し、疾病にかかり、又は死亡した場合は、労基法及び労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)に定めるところにより災害補償を行う。

【解説】
業務・通勤が原因で、従業員が負傷した場合や、病気にかかった場合は、会社が治療費などを負担しなければならいのが原則です。
ただし、従業員が労災保険から給付を受けることで、会社は負担をしなくとも良いということになっています。
ただし、精神的な損害に対する賠償など、労災保険の給付だけではカバーできない事案も増えてきています。
そこで、民間の損害保険会社の労災の上乗せ保険に加入することを検討する方が、良いかもしれません。
【追加を検討すべき規定】
テンプレートに規定がない事項として、健康診断や予防接種の受診拒否を防止すための規定、伝染病などに対する規定を入れることを検討してみてください。
規定例:
労働者は、正当な理由なく健康診断および予防接種を拒むことはできない。
規定例:
会社は、労働者が次のいずれかに該当する場合には、医師の意見に基づき、その就業を禁止することがある。この場合、労働者はこれに従わなければならない。

(1)他人に伝染するおそれのある疾病(新型インフルエンザ、新型肺炎を含む。)にかかったとき

(2)心臓、腎臓、肺等の疾病で労働のため病勢が著しく増悪するおそれのあるものにかかったとき
(3)前各号に準ずる疾病で、厚生労働大臣が定めるものにかかったとき

第11章 職業訓練

第63条(教育訓練)

会社は、業務に必要な知識、技能を高め、資質の向上を図るため、労働者に対し、必要な教育訓練を行う。

2 労働者は、会社から教育訓練を受講するよう指示された場合には、特段の事由がない限り教育訓練を受けなければならない。

3 前項の指示は、教育訓練開始日の少なくとも○週間前までに該当労働者に対し文書で通知する。

【解説】
教育訓練と研修の違い。
研修が「仕事で必要な知識・技術を高めるためのもの」であるのに対し、教育訓練は「人としての資質を向上させるためのもの」といえます。
社内で教育訓練の制度がすでにある場合や、導入が決定している場合は、就業規則に規定することになりますが、そうでないのであれば、規定を無理にする必要はありません。

第12章 表彰及び制裁

第64条(表彰)

会社は、労働者が次のいずれかに該当するときは、表彰することがある。
① 業務上有益な発明、考案を行い、会社の業績に貢献したとき。
② 永年にわたって誠実に勤務し、その成績が優秀で他の模範となるとき。
③ 永年にわたり無事故で継続勤務したとき。
④ 社会的功績があり、会社及び労働者の名誉となったとき。
⑤ 前各号に準ずる善行又は功労のあったとき。

2 表彰は、原則として会社の創立記念日に行う。また、賞状のほか賞金を授与する。

【解説】
私が、就業規則を作成する際には、「本当にテンプレートに記載されているような表彰をしますか?」と確認をさせていいたきます。
たいていの経営者の方が、「しない」とおっしゃいます。
しないのであれば、就業規則に規定をするのはやめたほう良いです。
有名無実化してしまうのは良くありません
テンプレートのような表彰制度ではなく、「勤続○年以上の人には、特別有給休暇を○日与える」という規定をされている企業さんや、「店長に就任した際には、ネーム入りのハサミをプレゼントする。」という規定をされている美容院さんなどがあります。
オリジナルかつ、本当に従業員が喜んでくれるような表彰制度があるといいなと、個人的には思います。

第65条(懲戒の種類)

会社は、労働者が次条のいずれかに該当する場合は、その情状に応じ、次の区分により懲戒を行う。
①けん責
始末書を提出させて将来を戒める。
②減給
始末書を提出させて減給する。ただし、減給は1回の額が平均賃金の1日分の5割を超えることはなく、また、総額が1賃金支払期における賃金総額の1割を超えることはない。
③出勤停止
始末書を提出させるほか、○日間を限度として出勤を停止し、その間の賃金は支給しない。
④懲戒解雇
予告期間を設けることなく即時に解雇する。この場合において、所轄の労働基準監督署長の認定を受けたときは、解雇予告手当(平均賃金の30日分)を支給しない。

【解説】
懲戒処分は、必ずしも就業規則に規定しないといけないものではありませんが、企業秩序を保つためには必要なものです。
また、企業が懲戒処分を行えるのは、就業規則に規定があるに限られているので、必ず規定をしておきます。(罪刑法定主義の考え方)
罪刑法定主義:
ある行為を犯罪として処罰するためには、法令において、犯罪とされる行為の内容、それに対して科される刑罰を、あらかじめ明確に規定しておかなければならない。
第3号
出勤停止期間は、7日以内と規定している就業規則が多いです。
出勤停止期間の上限は定められていませんが、2ヶ月・3ヶ月となってくると、さすがに長過ぎるのではないか考えます。
【追加を検討する懲戒処分】
出勤停止と懲戒解雇の間に、降格処分や諭旨解雇を規定することもあります。
降格は、職位を解任したり、引き下げることです。(職能資格制度が導入されている場合は、制度上の資格・等級を引き下げる)
諭旨解雇は、懲戒解雇相当の事由がある場合に、本人が事実を認め反省をしていると認められれば、普通解雇を行うことです。
また、退職金の支給がある場合、諭旨解雇は「退職金の一部を支給ないことがある」、懲戒解雇は「退職金の全部、または一部を支給ないことがある」と規定することがあります。

第66条(懲戒の事由)

労働者が次のいずれかに該当するときは、情状に応じ、けん責、減給又は出勤停止とする。
① 正当な理由なく無断欠勤が○日以上に及ぶとき。
② 正当な理由なくしばしば欠勤、遅刻、早退をしたとき。
③ 過失により会社に損害を与えたとき。
④ 素行不良で社内の秩序及び風紀を乱したとき。
⑤ 第11条、第12条、第13条、第14条、第15条に違反したとき。
⑥ その他この規則に違反し又は前各号に準ずる不都合な行為があったとき。

2 労働者が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。ただし、平素の服務態度その他情状によっては、第51条に定める普通解雇、前条に定める減給又は出勤停止とすることがある。
① 重要な経歴を詐称して雇用されたとき。
② 正当な理由なく無断欠勤が○日以上に及び、出勤の督促に応じなかったとき。
③ 正当な理由なく無断でしばしば遅刻、早退又は欠勤を繰り返し、○回にわたって注意を受けても改めなかったとき。
④ 正当な理由なく、しばしば業務上の指示・命令に従わなかったとき。
⑤ 故意又は重大な過失により会社に重大な損害を与えたとき。
⑥ 会社内において刑法その他刑罰法規の各規定に違反する行為を行い、その犯罪事実が明らかとなったとき(当該行為が軽微な違反である場合を除く。)。
⑦ 素行不良で著しく社内の秩序又は風紀を乱したとき。
⑧ 数回にわたり懲戒を受けたにもかかわらず、なお、勤務態度等に関し、改善の見込みがないとき。
⑨ 第12条、第13条、第14条、第15条に違反し、その情状が悪質と認められるとき。
⑩ 許可なく職務以外の目的で会社の施設、物品等を使用したとき。
⑪ 職務上の地位を利用して私利を図り、又は取引先等より不当な金品を受け、若しくは求め若しくは供応を受けたとき。
⑫ 私生活上の非違行為や会社に対する正当な理由のない誹謗中傷等であって、会社の名誉信用を損ない、業務に重大な悪影響を及ぼす行為をしたとき。
⑬ 正当な理由なく会社の業務上重要な秘密を外部に漏洩して会社に損害を与え、又は業務の正常な運営を阻害したとき。
⑭ その他前各号に準ずる不適切な行為があったとき。

【解説】
無断欠勤について
通達では、【2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合は、労働者の責に帰すべき事由に該当する】されています。
ですので、無断欠勤を懲戒解雇事由として規定するのであれば、14日が一つの目安となります。
第2項第3号
「正当な理由なく無断でしばしば遅刻・・・○回にわたって注意を受けても改めなかったとき。」
無断欠勤については、通達や判例などから14日という具体的な数字が基準となりますが、無断欠勤以外の事由に具体的な数字を規定するのは、おすすめしません。
具体的な数字を定めてしまうと、その数字に達しない限り懲戒処分を行えないことになってしまいます。
懲戒処分の手続きについて
懲戒処分を有効なものとするには、適正な手続きが必要となります。特に、懲戒解雇は相当重い処分であることから、従業員に弁明の機会を与えることが望ましいです。
そこで、弁明の機会を与えることを就業規則に規定することも検討してください。

第13章 公益通報者保護

第67条(公益通報者の保護)

会社は、労働者から組織的又は個人的な法令違反行為等に関する相談又は通報があった場合には、別に定めるところにより処理を行う。

【解説】
小さな会社で、就業規則にこのような規定をする必要はないでのは?というのが、個人的な考えです。

第14章 副業・兼業

第68条(副業・兼業)

労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。

2 労働者は、前項の業務に従事するにあたっては、事前に、会社に所定の届出を行うものとする。

3 第1項の業務に従事することにより、次の各号のいずれかに該当する場合には、会社は、これを禁止又は制限することができる。
① 労務提供上の支障がある場合
② 企業秘密が漏洩する場合
③ 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
④ 競業により、企業の利益を害する場合

【解説】
時代の流れとして、副業・兼業を推奨する規定となっています。ただし、第3項で一定の制限を設けています。
小さな会社の場合、もっとも重要なのは、副業・兼業をした場合に、きちんと自社の仕事をこなしてくれることではないでしょうか?
ですので、副業・兼業をすることによって、自社の仕事にどの程度影響がありそうなのかは、しっかりと話し合う必要があります。
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