近年は、育児休業等に対する社会的な理解が進んできているとはいえ、まだまだ育児休業取得の促進や、育児休業後の職場復帰に対して、企業の支援が必要な状況です。
また企業側にとっても、優秀な人材を育児によって離職させてしまわないようにすることが、この先ますます加速していく、労働人口減少への一つの対策となります。
そこで、この記事では従業員の育児休業取得・復帰への支援を行なう企業に支給される、両立支援助成金:育児休業等支援コースについてご説明していきます。
両立支援助成金:育児休業等支援コースとは?概要を説明
労働者の円滑な育児休業の取得・職場復帰の支援や、育児休業取得した従業員の代替要員を確保し、育児休業取得者を原職等に復帰せたり、職場復帰後に仕事と育児の両立が困難な従業員の支援を行った場合に支給される助成金です。
両立支援助成金:育児休業等支援コースとは?具体的な説明
育児休業等支援コースには、3つの種類があります。
2.代替要員確保時
3.職場復帰後支援
1.~3.共通の支給基準
1.育児休業等の育児支援に関する制度を、育児介護休業法に沿って、就業規則や育児介護休業規程に規定し、導入していること
2.一般事業主行動計画を策定し、労働局長に届け出ていること(申請時に行動計画が有効であること)。また、一般事業主行動計画を公表し、労働者に周知させていること
いずれのタイプの助成金を受給するにしても、上の1.と2.をクリアすることが、必要となります。
1.育児休業取得時・復帰時
労働者の円滑な育児休業の取得と職場復帰に取り組み、実際に育児休業を取得した労働者が出た場合に支給されます。
育児休業取得時の支給基準
1.育児休業の制度や手続きについて、就業規則や育児介護休業規程に規定していること
2.育児休業の開始日の前日までに、円滑な育児休業の取得・職場復帰について、育休復帰プラン(以下「プラン」)により支援する方針を労働者に周知していること
3.育児休業の開始日の前日までに、休業を取得する従業員と、上司または社内の担当者が、面談を実施し、その面談結果を「面談シート」に記録し、当該従業員のためのプランを作成してすること
①円滑な育児休業取得のための、育児休業取得者の業務の整理、引き継ぎに関する措置
②職場復帰支援のための、育児休業中の職務や業務内容に関する情報や資料提供の措置
4.雇用保険に加入している従業員であって、育児休業取得者の育児休業開始日の前日までに、プランにもとづいて業務の引き継ぎを実施していること
5.連続3ヶ月以上の育児休業を取得させたこと
※女性従業員の場合は、産後休業終了後引き続き育児休業をする場合は、産後休業期間も含める
6.雇用保険に加入している従業員であること
7.育児休業暇取得の直前、職場復帰時に在宅勤務をしている場合は、必ず在宅勤務規程を整備し、業務日報等により勤務実態(勤務日、始業・終業時刻、業務内容)が確認できること
育児休業取得時の助成額
○休業取得時 28.5万円(生産性要件に該当36万円)
○支給上限:2人まで
(契約期間のない労働者(正社員)1人、契約期間の定めがある労働者(パートタイマー等)1人)
※生産要件についてはこちらの記事を参考にしてください。
「生産性要件とは?助成金のもらえる金額が増える!対象の助成金は?」
育児休業取得時の支給申請までの流れ
1.育児休業等の育児支援に関する制度を、就業規則や育児介護休業規程に規定
2.一般事業主行動計画を策定し、労働局長に届け出る
3.一般事業主動計画を公表し、労働者に周知させる
4.育児休業の開始日の前日までに、上司等との面談を実施
5.プランを作成し、プランにもとづき業務を引き継ぐ
6.育児休業を取得(3ヶ月以上)
7.支給申請(2ヶ月以内)
職場復帰時の支給基準
1.育児休業の制度や手続きについて、就業規則や育児介護休業規程に規定していること
2.プランにもとづき、職場復帰までに、育児休業中の職務や業務内容に関する情報や資料提供を次のとおり実施していること
①育児休業終了後の職場復帰を円滑にするための情報や資料提供であること
②電子メールやインターネットを利用した提供方法も可能
3.育児休業終了前に、休業中の従業員と、上司または社内の担当者が、面談を実施し、その面談結果を「面談シート」に記録すること
4.面談結果を踏まえ、原則として原職等に復帰させること
本人が希望する場合は、原職等と異なる職務でも可
5.育児休業終了後から申請日までの間に、雇用保険に6ヶ月以上継続加入していること(実際に就業した日が5割以上必要)
6.職場復帰時に在宅勤務をしている場合は、必ず在宅勤務規程を整備し、業務日報等により勤務実態(勤務日、始業・終業時刻、業務内容)が確認できる場合に限ること
職場支援加算が受けられることがある
職場復帰時の助成額
○職場復帰時 28.5万円(生産性要件に該当36万円)
○職場支援加算 19万円(生産性要件に該当24万円)
○支給上限:2人まで
(契約期間のない労働者(正社員)1人、契約期間の定めがある労働者(パートタイマー等)1人)
職場復帰時の支給申請までの流れ
1.育児休業中に上司等との面接を実施
2.職場復帰後6ヶ月間継続雇用する
3.支給申請(6ヶ月を経過した日の翌日から2ヶ月以内)
2.代替要員確保時の概要
育休取得時を取得する従業員の代替要員を確保し、さらに育児休業を取得した従業員を原職等に復帰させた場合に支給されます。
代替要員確保時の支給基準
1.育児休業の制度や手続きについて、就業規則や育児介護休業規程に規定していること
2.育児休業取得者を、育児休業終了後に原職等に復帰させる旨を就業規則や育児介護休業規程に規定していること
3.育児休業取得者の代替要員を確保したこと
①育児休業取得者の業務を代替すること
・一部の業務のみを代替→×
・育児休業取得者が有資格者で、業務の実施に資格が必要な場合は、資格を有していること
・育児休業取得者と同じ手当が支給されていること②育休取得者と同じ事業所、部署で勤務していること
③育休取得者と所定労働時間がおおむね同じであること
④新規の採用または派遣の受け入れであること
⑤代替要員の確保時期が、事業主が育児休業取得者(または、その配偶者)の妊娠の事実を知った日以降であること
⑥育休取得者の休業期間中に、連続して1ヶ月以上勤務した期間があり、合計して3ヶ月以上または、90日以上あること
4.育休休業取得者に、連続して1ヶ月以上休業した期間が、合計で3ヶ月以上の育児休業を取得させ、原職等に復帰させたこと
5.育休休業取得者が雇用保険に加入している従業員であること
6.育児休業終了後から申請日までの間に、雇用保険に6ヶ月以上継続加入していること
代替要員確保時の助成額
○47.5万円(生産性要件に該当60万円)
※契約期間の定めがある労働者(パートタイマー等)は9.5万円加算(生産性要件に該当12万円加算)
○支給上限:1年度に10人まで
代替要員確保時の流れ
1.原職等に復帰させる旨の取り扱いを就業規則や育児介護休業規程に規定する
2.新規の採用や派遣の受け入れにより、代替要員を確保する
3.育児休業の取得(3ヶ月以上)
4.代替要員が業務を代替する
5.職場復帰後6ヶ月間継続雇用する
6.支給申請(6ヶ月を経過した日の翌日から2ヶ月以内)
3.職場復帰支援
育児休業から復帰後、仕事と育児の両立が困難な状況にある労働者のために、両立を支援するための制度導入などを行い、実際に利用する労働者が出た場合に支給されます。
職場復帰支援の支給基準
1.法律を上回る子の看護休暇または、保育サービス費用補助制度を就業規則や育児介護休業規程に規定し、導入していること
①有給かつ、時間単位で取得可能な子の看護休暇制度を就業規則や育児介護休業規程に規定している。
②1ヶ月以上の育児休業を取得し、復帰後6ヶ月以内に子の看護休暇を10時間以上利用していること
③育児休業開始時に雇用保険に加入していたこと
④育児休業終了後、雇用保険に6ヶ月以上継続加入していること
①未就学児にかかる保育サービスの費用を一部補助することを、就業規則や育児介護休業規程に規定していること
②1ヶ月以上の育児休業を取得し、復帰後6ヶ月以内に3万円以上の補助を行っていること
③企業主導型ベビーシッター利用者支援事業を活用していないこと
④育児休業開始時に雇用保険に加入していたこと
⑤育児休業終了後、雇用保険に6ヶ月以上継続加入していること
職場復帰支援の助成額
子の看護休暇制度
①制度導入時 28.5万円(生産性要件に該当36万円)
1事業主1回限り、保育サービス費用補助制度いずれか1つのみ
②制度利用時 1時間当たり1,000円(生産性要件に該当1,200円)
最初の支給申請日から3年以内に5人まで。
1年度に、200時間(生産性要件に該当240時間)まで
保育サービス費用補助制度
①制度導入時 28.5万円(生産性要件に該当36万円)
1事業主1回限り、子の看護休暇制度といずれか1つのみ
②制度利用時 事業主が負担した費用の2/3
最初の支給申請日から3年以内に5人まで。
1年度に、20万円(生産性要件に該当24万円)まで
職場復帰支援の支給申請までの流れ
1.育児休業の取得(1ヶ月以上)
2.法律を上回る子の看護休暇または、保育サービス費用補助制度を就業規則や育児介護休業規程に規定する
3.職場復帰後6ヶ月以内に子の看護休暇または、保育サービス費用補助制度を利用する
4.職場復帰後6ヶ月間継続雇用する
5.支給申請(6ヶ月を経過した日の翌日から2ヶ月以内)
まとめ
主要な支給基準は記載しておりますが、細かな基準もありますので、実際のパンプレット等を確認してください。
3つのコースがありますが、費用負担等のことを考えると小さな会社の場合は、育児休業時・職場復帰時が最も活用しやすいです。
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