厚生労働省から支給される助成金には多くの種類があります。
その助成金の受給金額の案内で、
「57万円(72万円)()内は生産性要件に該当する場合の助成金額です。」といった表記がされているケースがあります。
この助成金が増える「生産性要件」とはどのようなもので、どの助成金が生産性要件の基準をクリアすることで、助成金の金額が上積みされるのかをご紹介していきます。
生産性要件の目的
今後、労働力人口の減少が進んでいくなかで、経済成長を図っていくためには、一人ひとりの労働生産性を高めていくことが必要不可欠です。
このため、企業における生産性向上の取り組みを支援するため、生産性を向上させた企業が労働関係の助成金を利用する場合、その助成額又は助成率の割増等が行われます。
生産性要件の概要
生産性要件に対応している助成金を申請する会社が、以下の方法で計算した「生産性要件」を満たしている場合に、助成金額や助成率が上乗せされます。
助成金の支給申請を行なう直近の会計年度における「生産性」が、以下の1.または2.のいずれかに該当すること。
2.金融機関から一定の「事業性評価」得ていて、3年度前に比べて1%以上伸びていること
※1.2.いずれの場合も、3年度前の会計年度初日に、雇用保険適用事業主(雇用保険に加入している会社)であること
※人材確保等助成金の設備改善等支援コースの生産性要件は、上記とは異なります。
「計画認定申請日の属する会計年度の前年度とその3年後の会計年度を比べて生産性が6%以上伸びていること」
生産性の計算の仕方
※付加価値=営業利益+人件費+減価償却費+動産・不動産賃借料+租税公課
人件費には、役員報酬等は含めず、従業員給与等のみで算定します。
生産性要件の計算例
生産性要件の算定は、下図の生産性要件算定シートを使って行います。
(厚生労働省:パンフレット「労働生産性を向上させた事業所は労働関係助成金が割増されます」より)
厚生労働省「生産性要件についての案内ページ」
この図をご覧いただけるとおわかりいただけますが、損益計算書の内容を入力していくことになります。
緑色の欄(2)雇用保険被保険者数(人)は、各会計年度の末日時点で、雇用保険に加入していた従業員数を記入します。
損益計算書があれば、自社で入力していくことができますが、場合によっては顧問先さんに協力をお願いすることも可能かと思います。
なお、生産性要件を満たしたことにより、助成金額や助成金率の上乗せを申請する際には、生産性要件算定シートと一緒に、損益計算書や総勘定元帳の提出が必要となります。
生産性要件に対応している助成金一覧
生産性要件に該当することによって、助成額や助成率が割増される助成金の一覧です。(2020年10月現在)
助成金名 | 対象コース |
労働移動支援助成金 | 早期雇入れ支援コース |
中途採用等支援助成金 | 中途採用拡大コース 生涯現役起業支援コース |
地域雇用開発助成金 | 地域雇用開発コース |
人材確保等支援助成金 | 雇用管理制度助成コース 介護福祉機器助成コース 介護・保育労働者雇用管理制度助成コース 人事評価改善等助成コース 設備改善等支援コース 働き方改革支援コース 雇用管理制度助成コース(建設分野) 若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野) 作業員宿舎等設置助成コース(建設分野) 外国人労働者就労環境整備助成コース |
65歳超雇用推進助成金 | 高年齢者評価制度等雇用管理改善コース 高年齢者無期雇用転換コース |
両立支援等助成金 | 出生時両立支援コース 介護離職防止支援コース 育児休業等支援コース 再雇用者評価処遇コース 女性活躍加速化コース |
キャリアアップ助成金 | 正社員化コース 賃金規定等改定コース 健康診断制度コース 賃金規定等共通化コース 諸手当制度共通化コース 選択的適用拡大導入時処遇改善コース 短時間労働者労働時間延長コース |
人材開発支援助成金 | 特定訓練コース 一般訓練コース 教育訓練休暇付与コース 特別育成訓練コース 建設労働者認定訓練コース 建設労働者技能実習コース |
業務改善助成金 | - |
キャリアアップ助成金の正社員化コースを例にすると、通常であれば1人あたり57万円の助成金額ですが、生産性要件を満たしている場合は、1人あたり72万円と15万円の上積みがあります。
2,3人と積み上がっていくと結構な金額になりますので、生産性要件を満たしているかどうかは、ぜひチェックしてみてください。