試用期間中の解雇理由や社会保険、期間延長の規定例などについて解説

スポンサーリンク
試用期間 解雇理由や社会保険 労働法

試用期間に関するご相談やご質問には、いくつかの種類があります。

もっとも多いのは、試用期間中の解雇についてです。

「試用期間中の解雇は、通常の解雇とは何か違いはあるのか?」
「試用期間中でも、解雇する明確な理由は必要なのか?」
「試用期間中は、解雇予告をしなくていいのか?」

といったご質問をいただくことがよくあります。

この記事では、これらのご質問を踏まえた、試用期間中の解雇についての解説のほか、試用期間の延長や、試用期間中の社会保険への加入など試用期間に関する重要な事項についてご説明をしていきます。

試用期間とは?

そもそも試用期間とは、長期雇用を前提として、一定の期間内で、採用した従業員の人柄や職務能力などを評価して本採用するか否かを決定するためのものです。

余談ですが、
試用期間を設けることは、「長期雇用が前提」ですので、パートやアルバイトに試用期間を設けるのは、よく検討する必要があります。なぜなら、基本的にパートやアルバイトは、長期雇用が前提ではないはずなので、試用期間を設けることで、長期雇用するつもりだという理解につながってしまうからです。今後、同一労働同一賃金が中小企業にも適用されることを考えると、長期雇用前提の正社員と、それ以外の従業員の区分をしっかりとしておいた方が良いでしょう。

この試用期間中に、経営者が頭を悩ませるのが、思っていたような人材ではなかったので、解雇したいとなったときです。

試用期間中に解雇したい場合

解雇予告の有無について

まず、試用期間中の解雇で注意しなければいけないことは、解雇予告についてです。

たまに、試用期間中は「いつでも解雇していい」と勘違いをされている方がいらっしゃいます。

法律上、試用期間中に解雇予告が不要なのは、採用から14日以内に解雇する場合に限られます。14日を超えると、試用期間中であっても、30日以上前に解雇予告をする必要があります。

また、14日以内の解雇について勘違いが多いのが、14日以内であれば、「無制限に解雇できる」と思われていることです。

14日以内というのは、あくまでも「解雇予告が不要」なだけであって、理由を問わず解雇できるというわけではありません

当然、解雇するには明確な理由と、その理由に該当する事実が必要になってきますので、試用期間中に解雇に相当する理由を就業規則に規定しておきます。

試用期間中の解雇の理由

試用期間中の解雇理由としては、以下のようなものが考えられます。

(1)遅刻および早退並びに欠勤が多い等、出勤状態が悪いとき
(2)上司の指示に従わない、同僚との協調性がない、やる気がない等、勤務態度が悪いとき
(3)必要な教育は施したが会社が求める能力に足りず、また改善の見込みも薄い等、能力不足が認められるとき
(4)重要な経歴を偽ったとき
(5)必要書類を提出しないとき
(6)健康状態が悪く、勤務に耐えられないと会社が判断したとき(精神の状態含む)
(7)その他前各号に準じる、または解雇事由に該当するとき

過去の判例などから、試用期間中の解雇については、通常よりも広い範囲で解雇が認められていると考えられます。

本採用の可否を判断する時期の規定に注意

就業規則で本採用をするか否かを判断する時期について、「試用期間満了時」と規定しているケースをまれに見ることがあります。

このように規定がしてあると、原則、試用期間中に解雇することはできません

解雇できるのは、よほど本人に重い責任がある場合(横領など)に限られ、非常に高いハードルとなります。

ですので、判断の時期については、「試用期間中または、満了時」としておく方が会社の選択肢が増えます。

また、先ほど試用期間中の解雇は、本採用後の解雇と比べると広い範囲で認められているとお伝えしましたが、とはいえ、簡単に能力不足や勤怠状況を理由に解雇をするリスクは高く、試用期間中にもしっかりと会社が指導・教育を行っていく必要があります。

特に、年齢が若く、社会人経験が浅い従業員を採用した場合には、元の試用期間の長さにもよりますが、試用期間を延長することによって、対応をしていかなければならないケースも考えられます。

そこで、就業規則に試用期間を延長する旨の規定をしておきます。

試用期間の延長を就業規則に規定する

試用期間の延長について

もともとの試用期間の長さについて

試用期間を設ける場合、その長さについて法律上の制限はありません。

しかし、あまりに長い試用期間は従業員の雇用が不安定な状況が続くので、試用期間が無効とされた裁判例もあります。

長くても1年以内で設定するのが無難です。

私の関わった企業さんは、3か月という試用期間が一番多いです。

試用期間延長の規定例

会社は、試用期間満了までに試用期間中の従業員の適性等を考慮したうえで、最長○か月まで試用期間を延長することができる。

試用期間を延長してもなお、解雇せざるを得ない場合は、通常の解雇手続きを行うことになります。

通常の解雇手続きについては、こちらの記事を参考にしてください。
「正社員を解雇するには?解雇予告、給料の保障など気をつけることは?」

試用期間中の社会保険加入について

たまに、「うちの会社は試用期間中は、社会保険に加入しない」とおっしゃっている方がいらっしゃいますが、社会保険には、試用期間中であっても入社日から加入しなければなりません。

また、「入社してから2か月は社会保険に加入しなくてもいいんですよね?」とおっしゃる方もいらっしゃいますが、そのようなルールはありません

おそらく、社会保険加入の非対象者である「2ヶ月以内の期間を定めて使用される者」のことを、そのように解釈をされているのだと思いますが、あくまでも2か月以内の期間雇用者は社会保険に加入しなくてよいということですので、注意してください。

ちなみに、2ヶ月を超えて雇用を継続する場合は、仮にまた2ヶ月以内の雇用契約を結んでも、社会保険の加入対象なります。

まとめ

小さな会社では、「試用期間」が規定だけの話になっていて、実際は入社直後から本採用のような状況になっていることが多いです。

そのような状況にもかかわらず、この記事のように、解雇をしたいとなったときだけ、「試用期間中」ということを持ち出してこられる印象が強いです。

いくら就業規則で「試用期間」という規定があっても、実態が伴っていなければ、試用期間は無効となってしまいますので、その点は注意していただければ幸いです。