日本郵政の契約社員らの待遇格差をめぐる裁判で、最高裁が判決!

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日本郵便 待遇格差 同一労働同一賃金 労働法

日本郵便の有期契約社員と、有期契約から無期契約に転換した社員(以下、「非正規社員」)約150人が、手当や休暇などで、正社員と待遇の差があるのは、労働契約法第20条に違反するとして起こした裁判の最高裁判決が、2020年10月15日に出されました。

最高裁で審理された、すべての手当・休暇において、正社員との格差が不合理と判断されました。

この判決は、今後の同一労働同一賃金の運用に影響があるとして、非常に注目されていた裁判でしたので、その内容をご紹介していきます。

記事は2020年10月15日17時現在、わかっている情報にもとづくものとなっています。

非正規社員と正社員の待遇格差の最高裁判決が、なぜ注目されていたのか?

この裁判は、正社員と非正規社員の手当や休暇の待遇差が、労働契約法第20条に違反しているかどうかが、問われたものです。

労働契約法第20条
非正規社員(契約社員やパートタイマーなど)と正社員の間に、給与や福利厚生などの待遇で不合理な格差をつけることを禁止した規定。

正社員と非正規社員の待遇に差があることは、ある程度仕方がないにしても、その差が不合理な場合は、法律に違反していることになります。

不合理かどうかの判断は、法律で明確な基準が設けられているわけではないので、裁判で判断することになりますが、二審の東京・大阪・福岡それぞれの高裁で、手当と休暇の不合理を認める判断が異なっていたため、最高裁の判断が注目されていました。

さらに、この規定は現在は労働契約法からは削除され、同一労働同一賃金に関する法律(大企業は2020年4月1日、中小企業は2021年4月1日施行)に引き継がれていることから、今後の同一労働同一賃金の運用に大きな影響をおよぼす可能性のある裁判でした。

最高裁で格差が不合理と判断された手当・休暇

1.住居手当
正社員にのみ支給。月額最高27,000円
会社側の上告を受理せず、二審で決定。
2.扶養手当
正社員にのみ支給。月額12,000円
【判断のポイント】
扶養手当の目的は、扶養親族がいる者の生活設計を容易にすることで、継続雇用を確保すること。契約社員であっても、扶養親族がいて、継続雇用が見込まれるのであれば、支給するのが妥当。
3.年末年始勤務手当
正社員にのみ支給。
12月29日~12月31日:1日4,000円、
1月1日~1月3日:1日5,000円
【判断のポイント】
最繁忙期に業務に従事したことへの対価という手当の性質から、契約社員に支給しないのは不合理である。
4.祝日給
祝日に出勤した場合に支給
正社員:135%を支給
非正規:35%を支給
【判断のポイント】
正社員には、最繁忙期の年始期間の祝日に勤務した代償として、祝日給が支給されていると解されることから、契約社員に対して、年始期間に勤務した代償として、(正社員と同じ)祝日給が支給されていないのは不合理である。
5.夏期・冬期休暇
正社員にのみ与えられる
【判断のポイント】
夏期・冬期休暇は、労働から離れることで、心身の回復を図るのが目的。契約社員も短期間の勤務ではないので、夏期・冬期休暇を与えるのが妥当。
6.有給の病気休暇
正社員にのみ与えられる
非正規社員は無給の病気休暇。
【判断のポイント】
生活保障を図り、療養に専念させることで、継続的な雇用を確保することを目的とした休暇制度。契約社員でも継続的な勤務が見込まれているので、有給・無給の違いがあるのは不合理。
手当や休暇ごとに、その目的や性質を明確にしたうえで、正社員と非正規社員の仕事の内容や、勤務状況などを比較して判断していることがうかがえます。
また、正社員と非正規社員の責任の度合いの違いについては、判断のポイントに含めていないようです。

5年基準は用いず

大阪高裁では、年末年始勤務手当、祝日給、夏期・冬期休暇、有給の病気休暇は、契約期間が5年を超える契約社員に限り不合理と認めていました。

この5年の基準を最高裁がどう判断するかも注目されていましたが、5年という基準は用いませんでした。

この5年という数字は、有期労働契約が反復更新されて、通算5年を超えたときは労働者の申込みによって、契約期間がない無期労働契約に転換するルール(無期雇用転換ルール)からきていました。

この5年を基準にして、不合理か否かを判断してしまうと、契約期間が5年になる前に、契約を打ち切る企業が今以上に出てくる可能性が高いという判断があったからだと想像できます。

もともとは、11の手当・休暇が対象

この日本郵便の裁判では、最高裁が判断した6つの手当・休暇以外にも、5つの手当や休暇が、正社員との格差が不合理だと、非正規社員が訴えを起こしていました。

以下の5つの手当や休暇については、二審の判断が「不合理とは認められない」で一致していました。

早出勤務等手当
正社員:850円
非正規:300円
夜間特別勤務手当
正社員のみに支給
午後10時から午前6時に勤務した場合、1回につき最高3,500円支給。
また、一定期間に深夜勤務が9回超になった場合は、8,000円が加算。
外務業務手当
正社員にのみ支給
二輪車・四輪車での外務作業1日につき570円~1,420円
業務精通手当
正社員にのみ支給
外務正社員・・・評価に応じて最低月額5,100円
内務正社員・・・評価に応じて最低月額4,000円
夏期年末手当(賞与)
非正規社員は、手当の計算基礎額(基本給の6ヶ月平均額)が3割減
2020年10月13日の東京メトロ子会社(退職金)、大阪医科大学(賞与)の最高裁判決で、どちらも、正社員との格差は不合理に当たらないとされました。
賞与や退職金については、支給の目的や個人の評価、業績などが個々の企業によってバラバラなので、不合理に該当するとの判断には至らないようです。

小さな会社が取り組むべきことは

この裁判は、日本郵便という大企業の待遇格差についてのものでしたが、2021年4月に迫った同一労働同一賃金の施行に向けて、小さな会社の場合はどう取り組んでいけばよいのでしょうか?

まず第一にやるべきことは、手当と仕事の棚卸しです。

同一労働同一賃金では、文字どおり、正社員と非正規社員の仕事の内容が同一かどうかが重要だからです。

仕事の内容そのものだけではなく、転勤の有無やキャリアアップなどの要素もありますが、小さな会社の場合は、そのような違いは生まれにくいので、より仕事内容が重要になってきます。

そして、待遇格差が不合理か否かは、手当ごとに判断することになっているため、手当一つ一つの見直しが必要となってきます。

どのような性質で、何の目的で支給されている手当なのかが、明確に説明できなくてはなりません。

同一労働同一賃金が施行されると、非正規社員から、正社員との待遇格差について説明を求められた場合、企業はそれにこたえる義務が課されます。

今回の最高裁の判例が出る前の出版ですが、同一労働同一賃金については、こちらの書籍が参考になります。

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