中小企業のハラスメント対策としての相談窓口の設置と運営

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企業向け

ハラスメントは、中小企業にとって無視できない重大な問題です。
適切な対策を講じないと、従業員の士気や生産性の低下、さらには法的なリスクにもつながります。

ハラスメントの被害を早期に発見し、適切に対応するためには、相談窓口の設置が効果的です。

この記事では、中小企業が実践すべきハラスメント対策として、相談窓口の役割や設置方法、運営のポイントについて詳しく解説します。

中小企業のハラスメント対策の必要性

中小企業におけるハラスメントの現状

中小企業においては、従業員数が少なく全員が顔見知り、密な人間関係という状況のため、ハラスメントが表面化しにくく、把握をより難しくしています。

例えば、中小企業ではハラスメントに関して以下のような課題や問題があります。

  • 職場の異動などができず、加害者との関りが続くため被害者が声を上げにくい

  • ハラスメントに対する知識が不足しているため、知らず知らずのうちにハラスメント行為が行っている

  • 会社や上司がハラスメント行為を認識しても、適切な対応をとらずに放置してしまう

このような課題などをほったらかしにしたままでは、従業員の心身の健康が損なわれ、結果的に企業の生産性や業績に悪影響をおよぼします。

また、年々行政機関へのハラスメントの相談が増加していることからも、多くの中小企業でその対策の重要性がますます高まっているため、積極的にハラスメント対策に取り組む必要があります。

ハラスメントが企業に与える影響

ハラスメントが会社に与える影響は多岐にわたります。

  • 従業員のモチベーションや生産性の低下
    ハラスメントの被害者だけでなく、周囲の同僚も不安やストレスを感じることで、職場全体の雰囲気が悪化します。これにより、チームワークが損なわれ生産性も低下します。

  • 従業員の離職につながる
    ハラスメントの被害者だけでなく、職場の雰囲気の悪化や士気の低下によって、従業員が退職する可能性が高まります。

  • 会社のイメージや評判が損なわれる
    ハラスメントの事実が公になると、会社の評判が大きく損なわれ、顧客や取引先からの信頼を失い、ビジネスチャンスの喪失につながる可能性があります。

  • 訴訟に発展する可能性がある
    ハラスメント行為に対して適切に対処しなかった場合、訴訟に発展し、慰謝料の支払いなどの経済的な負担や社会的信用の低下を招くこともあります。

このように、ハラスメントは会社に多くの悪影響をもたらすものです。

ハラスメント対策の法的な義務と重要性

労働諸法令では、ハラスメントを防止するための措置を講じることが会社の法的義務とされています。

2024年5月現在、会社は、以下のハラスメント防止ための措置を講じなければなりません。

  • セクシャルハラスメント
  • パワーハラスメント
  • 妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント

会社はハラスメント対策のためのポリシーを策定し、従業員に対する教育や研修を実施することが求められています。また、ハラスメントに関する相談窓口の設置も求められています。

法的な義務を守ることはもちろんですが、法律を抜きにしても、ハラスメントに対して会社が積極的に対策を講じることで、従業員からの信頼を得ることができ、会社全体のモチベーションや生産性の向上にもつながっていきます。

働きやすい職場環境づくりの取り組みを行うことが、ハラスメント対策につながっていきます。

ハラスメント相談窓口の役割

ハラスメント相談窓口の設置理由

繰り返しになりますが、ハラスメント相談窓口の設置は法的にも求められています。

ただ、法律うんぬんに関係なく、相談窓口の設置は、会社が健全な職場環境を維持するために非常に有効な方法ですので、ここからは相談窓口について詳しく解説していきます。

ハラスメント相談窓口を設置すべき理由

  • 被害者のよりどころとなる
    ハラスメントの被害者は、誰に相談したらいいのか、どう対処すればいいのか思い悩むものです。そこで、相談窓口を設けることで、被害者が安心して相談できる場を提供します。

  • ハラスメントの早期解決につながる
    相談窓口は、ハラスメントを社内で解決するための安全な場所となります。これにより、ハラスメントの早期発見と迅速な対応を可能にし、ハラスメントの早期解決につなげることができます。

  • ハラスメントに対する会社の姿勢を示すことになる
    相談窓口を設置することは、会社がハラスメント対策に真剣に取り組んでいる姿勢を示すことになり、これにより従業員の信頼を得ることができます。

このように、相談窓口の設置は、会社全体の健康と安全を守るための重要な手段となります。

ハラスメント相談窓口の基本機能

相談窓口の基本機能は、当たり前のことながら従業員からのハラスメントに関する相談を受け付けることです。これには、電話やメール、対面での相談が含まれます。

相談員は、相談内容を慎重に聞き取り、必要に応じて詳細な情報を収集します。
次に、相談内容に基づいて適切な対応策を提案し、被害者の保護と問題の解決を図ります。
※相談員には、解決の取り組みを任せず、事実関係の聞き取りのみを任せる運用の仕方もあります。

また、相談員は、ハラスメントの発生を予防するための教育や研修の実施にも関与します。従業員に対してハラスメントの認識を高めるための資料提供やセミナーの開催を行い、ハラスメントの予防に努めます。
※これも、相談員にはここまでの業務範囲を求めない運用の仕方もあります。

ハラスメント相談窓口が効果的に機能するための要素

相談窓口を効果的に運営するためには、いくつかの重要な要素があります。

  • 相談員への適切な選定と教育、訓練
    相談員は、ハラスメントに関する最新の堀津や対応方法を理解し、被害者に対して適切なサポートを提供できるように訓練を受ける必要があります。

  • プライバシーと機密性の確保
    従業員が安心して相談できるように、相談内容が外部に漏れないよう徹底した管理が求められます。相談内容を誰にどの程度伝えてもよいのかを相談者に確認するなどの配慮も必要です。

  • 定期的な点検と改善
    相談窓口の運営状況を定期的に点検し、必要に応じて改善策を講じることで、相談窓口の機能を常に最適な状態に保つことができます。

これらの要素を満たすことで、効果的な相談窓口を運営することができ、ハラスメントの発生防止や早期解決につなげることができます。

ハラスメント相談窓口の設置方法

ハラスメント相談窓口設置の順序

ハラスメント相談窓口の設置順序の一例です。

  • ハラスメント対策のポリシーを明確にし、従業員に周知する

  • 相談窓口の役割や機能を具体的に定義する

  • 相談員の選定と教育を実施する

  • 従業員が相談しやすい方法や仕組み、対応方法を決める

  • 相談窓口の存在を周知し、その利用方法をわかりやすく伝える

相談窓口の相談員の選定

前述のとおり、ハラスメント相談窓口を効果的に運用するためには、相談員の選定が大切な要素となります。

相談員には、ハラスメントに関する深い知識と適切な対応能力が求められます。

理想的な相談員の要件としては、

  • 従業員からの信頼を得ている
  • コミュニケーションスキルが優れている
  • 冷静かつ公正に対応できる
  • プライバシーや機密を守れる

といったものがあります。

さらに、相談員に選定された人には、定期的な教育やトレーニングを提供し、最新の法規制や対策方法を学んでもらうことが重要です。

また、相談員の業務負担を軽減するために、複数の相談員を配置することも検討すべきです。

これにより、相談員が十分な時間とリソースを持って、従業員からの相談に対応することが可能となります。適切な人員の選定と育成は、相談窓口の機能を最大限に発揮させるための鍵となります。

コストとリソースの管理

相談窓口の設置と運営には、一定のコストとリソースが必要です。

まず、予算を明確に設定し、相談窓口に必要な経費を計上します。
これには、相談員の人件費、教育トレーニングの費用、システム導入や運営費などが含まれます。

次に、リソースの効率的な配分を行い、必要なツールや設備を整えます。

例えば、相談記録を適切に管理するためのソフトウェアや、匿名相談を受け付けるためのオンラインプラットフォームの導入などが考えられます。

また、定期的にコストとリソースの使用状況を点検し、改善点を見つけることが重要です。

これにより、相談窓口の運営を継続していくことができ、効果的に機能することになります。

ハラスメント相談窓口の運営と管理

プライバシーと機密性の確保

ハラスメント相談窓口の運営において最も重要な要素の一つが、プライバシーと機密性の確保です。

従業員が安心して相談できる環境を整えるためには、相談内容が外部に漏れないよう徹底した管理が必要です。

具体的には、相談記録は厳重に保管し、アクセスできる人を限定することが求められます。デジタルデータの場合は、強固なセキュリティ対策を施し、不正アクセスを防ぐための定期的なシステムチェックを行います。

また、相談員には、従業員のプライバシーを尊重し、相談内容を第三者に漏らさないという厳格な倫理規定を守らせることが重要です。

定期的な研修を通じて、相談員が機密保持の重要性を再認識し、適切な対応を行うよう指導します。

これにより、従業員は相談窓口を信頼し、安心して利用することができるようになります。

相談員の定期的なトレーニングと教育

相談窓口の運営には、相談員の定期的なトレーニングと教育が不可欠です。

相談員は最新の法規制やハラスメントに関する知識を常にアップデートし、適切な対応方法を習得する必要があります。

相談員のトレーニングと教育の一例

  • 外部講師を招いた研修やセミナーへの参加
  • オンライン研修やセミナーへの参加
  • ケーススタディやロールプレイングの実施
  • 相談員同士の情報共有やフィードバック
  • 従業員からのフィードバック

定期的なトレーニングにより、相談員は多様な状況に柔軟に対応できるようになり、従業員に対して質の高いサポートを提供することができます。

相談窓口の点検と改善

相談窓口の効果を最大限に引き出すためには、定期的な点検と改善が必要です。

相談窓口の運営状況を定期的に点検し、どの程度効果的に機能しているかを評価します。
※点検には、相談件数・対応速度、解決率などの指標を用います。

また、従業員からのフィードバックを積極的に収集し、相談窓口の運営に対する満足度や改善点を把握します。

さらに、評価の結果をもとに、必要に応じて相談員の追加教育やシステムのアップデートを行い、対応力を強化します。

こうした取り組みを通じて、会社はハラスメント防止のための効果的な相談窓口を維持し、従業員の信頼を得ることができます。

ハラスメント相談窓口の事例

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ハラスメント相談窓口が機能した事例

社内外の相談窓口を併用することで、従業員が相談しやすい環境を整えました。

社内の信頼できる相談員と、外部の専門家による匿名相談を提供することで、従業員が状況に応じて選べる選択肢を用意しました。

これにより、従業員の相談件数が増加し、早期発見と迅速な対応が実現。

また、定期的なハラスメント対策研修を実施し、全従業員にハラスメントの認識を深める教育を行いました。

ハラスメント相談窓口が機能しなかった事例

ある企業では、相談窓口の設置は行ったものの、従業員にその存在が十分に周知されておらず、利用率が低迷。

相談窓口はあるものの、ハラスメント事案の早期発見や解決にはつながりませんでした。

まとめ

ハラスメント対策は、いまや中小企業にとって避けて通れない重要な課題です。

そこで、この記事では、ハラスメントの現状や企業に与える影響、法的義務の重要性について解説しました。

また、相談窓口の設置理由や基本機能、成功するための要素を紹介し、具体的な設置方法や運営のポイントについても詳しく説明しました。

この記事の内容を参考にしていただき、ハラスメント対策を効果的に実施していただくことで、従業員が安心して働ける環境を整えていくことができるでしょう。