会社で就業規則が閲覧できない場合は、労働基準監督署で閲覧が可能か?

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就業規則の閲覧について 個人向け

会社で就業規則が閲覧できない場合は、労働基準監督署で閲覧が可能か?

「残業代や有給休暇のことについて知りたくて、就業規則を見せて欲しいと会社にお願いしても就業規則を見せてくれない。」

長年、社会保険労務士をやっていると、働いている人からこのようなお話をお聞きすることがあります。

「なにか方法はありませんか?」と聞かれたきかれたときは、「労働基準監督署で閲覧させてもらえるかもしれません。」とお答えしています。

ただし、労働基準監督署で就業規則を閲覧させてもらうのは、イレギュラーなことですので、この記事でお伝えする基本的なことをおさえたうえで行ってください。

また、労働基準監督署によっては、閲覧を拒否するケースもあるようですので、その場合はどのように対応すれば良いのかもお伝えしていきます。

会社には就業規則を閲覧可能にしておく義務がある

会社は就業規則を従業員に、常に閲覧可能な状態にしておかなければならないと、法律で定められています。

常に閲覧可能な状態=「周知」といいます。

例えば、誰でも閲覧可能な棚にしまっておく、書面で全社員に配布する、全社員がアクセス可能なクラウドサービスや、共有サーバーに保存しておくなどの方法があります。

小さな会社でよくありがちなのが、社長の机の引き出しの中にしまってある、金庫に入れてあるなどです。

ですので、従業員が「就業規則を見たことがない。」ということは、まあまあ起こります。

就業規則を見たいと言ったときの反応は?

「就業規則を見せてください。」と言った時の反応によりますが、単純に「周知」のことを知らない経営者もいますので、法律のことを伝えてみるのも一つの方法です。

従業員の周知がされていない場合は「周知義務違反」となり、労働基準監督署の是正勧告や指導の対象となり、最悪の場合には、罰金が科されることもあります。

経営者によっては、「なぜ就業規則を見たいのか?」その理由がわからないので見せない、見せたくないという人もいます。

ですので、理由が言えるのであれば、素直に言ってみましょう。

ちなみに、就業規則がいつでも閲覧可能な状態になっていれば、会社は周知義務を果たしているということになります。
その状態で「就業規則を見たことがない」「そんな規定は知らなかった」というのは、労働者側の責任となりますので注意しましょう。

それでも会社が就業規則を閲覧させてくれない場合は、会社が労働基準監督署に届け出ている就業規則を、労働基準監督署で閲覧させてもらうことになります。

就業規則の閲覧

就業規則を労働基準監督署で閲覧させてもらうには?

労働基準監督署が、労働者に監督署で保管している就業規則を閲覧させる場合の取り決めがあります。

1.会社が就業規則を周知しているかどうかを労働者に聴取する

2.会社が就業規則の周知義務をはたしておらずかつ閲覧をさせてくれるように会社に求めても閲覧できる状況にないと判断される

3.労働基準監督署において保存している範囲の就業規則を閲覧させる。
または、説明するなどの方法によって開示する。

このように、労働基準監督署では、会社とのやり取りや経緯を聞かれますので、労働基準監督署で就業規則の閲覧を希望する場合は、会社とのやり取りをしっかりと記録したうえで、閲覧の申請をする必要があります。

また、労働者から就業規則の閲覧希望があった場合、労働基準監督署はただ単に就業規則の閲覧をさせるだけではなく、会社に法律違反があった場合は指導するようになっています。

労働基準監督署が、会社に就業規則の閲覧を希望した従業員の名前を出すことはありません。

すでに会社を退職している場合は?

先ほどの、「会社が就業規則を周知していたか?」「就業規則を閲覧状況になかったか?」の判断は、閲覧を希望した人の、在職中の状況で判断されます。

また、すでに会社を退職している場合は、就業規則のすべてを閲覧できるわけではありません

退職した労働者に対する就業規則の開示は、「退職労働者と当該事業場との間の権利義務関係に係る規定に限定すること。」となっています。

要するに、会社と退職者で解釈が相違する規定や、争いがある規定に限定されるということです。

労働基準監督署に就業規則の閲覧を拒否されたら?

労働基準監督署によっては、拒否することもあるようです。

そんなときは、「通達があるはずです。」と伝えましょう。
実際に、下記の通達があります。

厚生労働省労働基準局長基発354号「届出事業場に所属する労働者等からの就業規則の開示要請の取扱いについて」平成13年4月10日
通達とは?
上の立場の行政機関から下の立場の行政機関に対して、法律の解釈や実際の運用の仕方などを指示することです。通達は法律ではなく、役所内での取り決めです。

原則は会社で見せてもらうことです。繰り返しになりますが、会社には就業規則の周知義務があります。

会社が就業規則をどうしても見せてくれないという場合にのみ、労働基準監督署での閲覧申請をしましょう。

就業規則を届けていない会社の場合は?

就業規則は法律上、従業員が10人以上(パートやアルバイト含む)の事業場に作成と届け出の義務があります。

逆に言えば、従業員数が10人未満であれば、就業規則を作成してなくても、法律上問題はないということになります。

会社単位ではなく、事業場単位ですので、本店と支店の従業員数が12人であっても、それぞれ、6人ずつの在籍であれば、就業規則の作成・届け出の義務はありません。

※10人以上でも就業規則の作成・届け出をしていない会社もあります。(これは単純に法律違反です)

このような場合でも、労働基準法などの法律で定められていることに関しては、就業規則の有無にかかわらず、労働者の権利として認められます

例えば、有給休暇の取得や残業代を受け取ることは、法律で認められていることです。
これらのことで、会社の対応に疑問がある場合は、労働基準監督署で相談に応じてもらえます。

まとめ

就業規則の閲覧に対して、ただ単に無知な会社(経営者)であるならまだしも、そのことを知っているうえで、就業規則の閲覧を拒み続けるような会社の場合は、その会社で働き続けるのかづうかも含めてよく考えてください。