就業規則に必ず記載すべき絶対的必要記載事項など、3つの記載事項の解説

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就業規則 絶対的必要記載事項とは 労働法

就業規則に何を記載すべきかは、基本的には会社の自由ですが、法律で就業規則を作る場合には、絶対に記載してくださいね。という項目が法律で定められています。

これが、絶対的必要記載事項と呼ばれるものです。

また、必ずしも就業規則に記載すべき必要はないけれど、制度やルールを会社で作る場合には、就業規則に記載してくださいね。という項目もあります。

それが、相対的必要記載事項と呼ばれるものです。

この2つ以外の会社が自由に記載して良い項目が、任意的記載事項です。

まとめると、就業規則には3つの記載事項があることになります。

1.絶対的必要記載事項
2.相対的必要記載事項
3.任意的記載事項

この記事では、この各記載事項について詳しくご説明していきます。

就業規則の絶対的必要記載事項とは?

法律(労働基準法)で、つぎの3つの項目は、必ず就業規則に記載しなくてはならないことになっています。

(1)始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに交替制の場合には就業時転換に関する事項
(2)賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
(3)退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
(1)始業及び終業の時刻など

【始業及び終業の時刻、休憩時間】

1日の始業時刻、終業時刻と休憩時間を記載することで、1日の所定労働時間が明確になることとなります。

ただし、1日の所定労働時間だけを記載するだけでは足りないという、行政解釈がされています。

休憩については、時刻を特定することまでは求められておらず、休憩時間○分・時間という記載の仕方でも構いません。

【休日】

休日についても、曜日を特定することまでは求められていません

一般的には、曜日を特定して記載することが多いですが、1週間に2日といった規定の仕方をすることも可能です。

シフト制による勤務などで、従業員によって始業・終業時刻、休憩時間、休日が異なる場合は、原則、すべてのパターンを記載します。

ただし、パターンがたくさんある場合や、定年退職後の再雇用などで個別に勤務時間を設定する場合は、就業規則には標準的なものを記載し、具体的には、個別の労働契約書や労働条件通知書で明示することも可能です。

【休暇】

法律で定められている
年次有給休暇、産前・産後の休暇、生理休暇、育児休業(子の看護休暇含む)、介護休業(介護休暇含む)などだけでなく、会社で制度化されている年末年始休暇、夏期休暇、慶弔休暇などがあれば、記載をする必要があります。

(2)賃金の決定など

【賃金の決定、計算】

記載例:
「給与は、本人の職務内容、技能、勤務成績、年齢等を考慮して各人別に決定する。」

また、このほかに給与体系(各種手当)の記載も必要と考えられます。

基本給
〇〇手当
〇〇手当
時間外勤務手当
休日勤務手当
深夜勤務手当

【支払の方法】

賃金の支払い方法について、現金で直接支給するのか、銀行振込なのかを記載する必要があります。

法律上は、いまだに現金払いが原則で、銀行振込を行うのには、従業員の同意が必要とされています。

今後は、電子マネーでの支払いが解禁されるようになっていくはずですが、電子マネーで給与を支払うようになった場合は、就業規則への記載が必要となります。

【賃金の締切り及び支払の時期】

締切り(給与締日)や支払の時期(給与支給日)について記載が必要です。

【昇給】

昇給については、仮に昇給が予定されていなくとも、就業規則への記載は必要となりますので、「昇給はしない」といった規定を行ないます。

(3)退職に関する事項

どのような場合に「退職」となるのかを記載します。

退職事由の例:
・辞職(従業員からの申し出による退職)
・死亡したとき
・労働契約期間の満了
・休職期間の満了
・定年退職
・解雇
解雇の事由についても記載することが求められています。
規定例

就業規則の相対的必要記載事項とは?

法律(労働基準法)で、次の8つの制度やルールを作る場合には、就業規則に記載しなければならないとされています。

(1)退職手当に関する事項
(2)臨時の賃金(賞与)、最低賃金額に関する事項
(3)食費、作業用品などの負担に関する事項
(4)安全衛生に関する事項
(5)職業訓練に関する事項
(6)災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
(7)表彰、制裁に関する事項
(8)その他全労働者に適用される事項

相対的必要記載事項は、あくまでもルールや制度がある場合は、就業規則に記載が必要なのものですが、制度自体が存在していないのにもかかわらず、就業規則に記載してしまうと、制度が存在するものとしてみなされてしまうおそれがあるので注意が必要です。

過去に、退職金がない会社の就業規則に、退職金制度が記載されており、従業員がその規定を根拠に裁判を起こしたところ、会社に退職金の支払いが命じられたことがあります。
(1)退職手当に関する事項

いわゆる「退職金」に関する事項です。退職金制度がある場合は、就業規則に規定が必要となります。

(2)臨時の賃金(賞与)、最低賃金額に関する事項

臨時の賃金とは、主に賞与のことを意味しますが、1ヶ月を超える期間の出勤状況や勤務成績によって支給される手当なども臨時の賃金に含まれます。

(3)食費、作業用品などの負担に関する事項

従業員に食費や作業用品、社宅費を負担させる場合は、就業規則への記載が必要となります。

(4)安全衛生に関する事項
(5)職業訓練に関する事項

自社で本当に実施すること、実施していることだけを記載します。

(6)災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項

労災保険や健康保険で保障されるものは相対的必要記載事項には含まれないとされていますので、会社独自の上乗せ保障がある場合に記載します。

(7)表彰、制裁に関する事項

表彰制度について、就業規則に記載してあるものの、実際は実施していないケースをよく見かけますので、本当に行う場合のみ記載しましょう、

制裁は、懲戒処分に関する記載をすることになります。懲戒処分を行うためには、就業規則への記載が必要となります。

(8)その他全労働者に適用される事項

行政通達では、休職制度に関する事項欠勤日を有給休暇に振り替える制度に関する事項などが該当するとしています。

就業規則の任意的記載事項とは?

会社が自由に記載してよい事項です。

絶対的必要記載事項と相対的必要記載事項は、会社の独自性を出しにくいですが、任意的記載事項は、法律や公序良俗に反しない限りは、何を書いても良いので、会社の独自性を出せるものとなります。

具体的には、経営理念・行動指針といった全社員で共有したいことや、働くうえで守って欲しい服務規律、就業規則の適用範囲などがあります。

就業規則に必要記載事項を記載していなかったら?

記載事項のもれは罰金刑

労働基準法では、必要事項の記載がもれている就業規則を作成・届け出をした場合、就業規則の作成義務違反・届出義務違反として、30万円以下の罰金刑が定められています。

実務的には、ただちに罰金刑が科されることはなく、就業規則の修正を求められることになるでしょう。

まとめ

就業規則を作成する場合は、就業規則のひな形・テンプレートを活用することが多いはずですので、記載事項がもれることはないでしょう。

ですので、就業規則作成で気をつけることは、記載事項がもれることよりも、自社の実態に合ったもの、確実に運用できるものになっているかが重要です。